なのは長編小説(1)

□輝ける風と燃え盛る炎は(その二)
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第五話:それは、母からの最後の贈り物


十月七日、午前八時、グレンワード家

「エリーゼ!お前、アレをどこにやった!」
父が、そう言いながら、台所で朝食を作っている母の元へと、歩いて来ました
「あら、あなたが朝から家に居るなんて、今日は大嵐かしら?」
そう言って、母はクスクスと笑いました
「とぼけるな!お前だろう!アレに下らぬ細工をしたのは」
父の剣幕に、母は真剣な顔で反論します
「下らぬ細工とは何ですか、あの子に守れる力を与えただけです」
「何だと、エリーゼ、お前が何をしたか分かっているのか!ワシら夫婦の長年の研究を、台無しにしたのだぞ!」
「それでも、あの子の将来が大事です!あなたは、それでも父親ですか」
「そうだとも、アイツは…、カイリは天才魔導師のワシと魔力の高いエリーゼ、お前の間に産まれた、最強の魔導師になる息子だ」
「それでは、カイリは、あなたにとって、兵器や実験動物だと言うのですか!?私との結婚も、ただ魔力が高いだけ、それだけで愛していなかったのですか?」
「黙れ!」

パン!

父が平手打ちで、母を殴りました
殴られた右頬を抑えながら母が、キッ、と、父を睨むと
「朝飯は要らん!今日はもう行く!」
そう言って、父は白衣を来て家を出ました
「うぅ、カイリ…、ゴメンね、ゴメンね」
母は物陰から見ている僕に、泣きながら謝りました


同日、午前十時、グレンワードデバイス研究所、第一実験室

『カイリ、今日は戦闘訓練を行う』
スピーカーから、父の声が聞こえて、実験室の扉が開くと、中から巨大な合成獣(キメラ)が現れました
その姿、ライオンの顔に、巨大なコウモリの羽、サーベルの様な牙、そして鬣(たてがみ)には無数の蛇が付いてました
僕の手には、武装局員用のストレージデバイスが渡されました
『やれ』
父の号令と同時に、キメラが僕に襲いかかり、口を開いて飛び掛ってきました
それを避けて、デバイスを構え、光の刃を射出、キメラの足を狙います
「グギァャオォウー!」
見事命中、前足から血を吹き出し、苦しみの雄叫びを上げて、倒れました
「グルルル…」
喉を鳴らして、キメラはコウモリの羽で羽ばたき、空中から襲いかかります
今度も避けた、と思ったら、蛇の一匹が僕の腕に噛みついてました。それは毒蛇らしく、激痛と共に耐えきれないほどの息苦しさが、ありました。
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