なのは長編小説(1)

□輝ける風と燃え盛る炎は(その六)
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それは、ほんの一週間前…、高町家での夕飯を、カイリと一緒に食べた後の一時 
なのはがカイリに言った、最初の命令 

[私の友達として遠慮しないで、困ったことがあれば何でも相談する事]

友達…
なのはにとって、カイリは大切な友達であり、欠け換えのない存在だった 
変わることはない、今、なのはに出来る事と言えば、カイリの無事を祈ることだけだった

「ルーキスウィンド…、私も、お前のようには強くなれないのか」
出発の日の朝、シグナムはカイリとの模擬戦で、引き分けだと言った 
だが、それは一対一で敗北を認めたくない、ベルカの騎士としてのプライドがあったからであり、実の所、シグナムは負けていた



その間にも、力を合わせたカイリとアリーナによる、デストロイマーダーの意思との戦いは、激化していき、二人は、高速で飛行していた
「アリーナ!」
「うん!カイリ」
二人は頷き合い、カイリは右手に持ったシャイニングホープを
アリーナは左手に持ったバーニングディターマインを 
互いの武器を重ね 
反対側の腕をアリーナは、カイリの 
カイリはアリーナの腰に回し、体を密着させる
「「輝ける風、今吹きすさび、燃え盛る炎となりて、今、呪いを解きほどけ!」」
同時に、呪文を詠唱、一つの光の矢と化して、デストロイマーダーの意思に向け、突進する

ガキィィィィィイン!

甲高い金属音を響かせ、デストロイマーダーの意思の剣と、シャイニングホープが、ぶつかり合う


(何故だ、なぜ…、この者の瞳に懐かしさを感じるんだ)

―私も、手伝います

デストロイマーダーの意思の脳裏に、声が響く

―私も教授の、お手伝いをしますから、最後まで諦めないで下さい
(誰だ、誰が話しかけているんだ)

―ほら、教授!ラクタイン教授!これで研究が出来ますね

声と同時に、思い出されるのは、少女の雰囲気を残した、女性の顔

―教授、いえ…、あなた…、私たち、夫婦になれたんですね

その女性は、人を愛する事を、初めて感じさせてくれた

―あなた!今ね、お医者さんに行ったら、おめでただって!妊娠三ヶ月よ!

その言葉を聞いた時“心底嬉しい”と感じた


(しかし、誰だ)
次々に流れ込んでくるのは、時には笑い、時には怒り、時には悲しむ、女性の声
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