なのは長編小説(1)

□輝ける風と燃え盛る炎は(その六)
5ページ/11ページ




アースラ艦内、医務室

「…以上が、これまでの事件の内要です。脱走した二人の犯罪者、ならびに脱走の手助けをした三人は厳重にバインドを架け護送中、アッシュ・S・ベリー執務官は行方不明、現在調査チームを組んで、遺体の捜索に当たっています。また、ラクタイン・グレンワードは死亡を確認しました」
クロノは、リンディにこれまでの事を報告し、また、自分自身の無力さを嘆いていた 
一人の死人も出さずに、事件を解決させるつもりが、結局、二人もの命を奪ったことになる
「そう…、分かりました。ところで、カイリ・ルーキスウィンド二等陸士は、どうしてる?」
「それは…、カイリ二等陸士は現在、自室にて寝ています」


最終話:それは、新たなる希望




アースラ内、仮眠室

カイリとアリーナが同じベッドで、寄り添うようにして寝ていた

「もう…、五年も待たせるなんて、待たせ過ぎっ…、でも…」
先に目を覚ましたアリーナが、カイリの髪を優しく撫で、静かに語り掛ける 
「安心したよ…、ちゃんと良い男に育ってて」
アリーナは目だけを薄く開き、暫くカイリの寝顔を眺めていた 
一定のリズムで呼吸を繰り返す、カイリの唇を見て、途端に体温が高くなり、鼓動が早くなるのを感じる
「私…、カイリとキス、したんだよね」
だったら、もう一度、と、アリーナがカイリの唇に近付いて
「ん…、んん…、アリーナ?」
「あっ…」
カイリの目が開いていき、アリーナの顔が更に赤くなる
「あのさ…、カイリ…、その〜ね…」
アリーナが、なんと言えば良いのか、迷っていると

ギシッ
「え…」
体勢を変えて、カイリが、アリーナに覆い被さっていた
「ちょっと…、カイリ?」
「アリーナ、さっきは不意打ちを食らったから、今度は僕が」


カイリの唇が近付いていく



アリーナは拒否せず、ゆっくりと穏やかに、カイリの唇を受け入れる 

十秒よりも…

三十秒よりも…

互いの温もりを確かめ合うように、長く続けられた


そして、数分後
「時間だね」
アリーナから少し離れて、カイリが呟く
「うん、例え、どんな理由があっても、私はフェイトを傷付けて、バルディッシュを奪ったもんね」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ