なのは長編小説(1)
□輝ける風と燃え盛る炎は(その六)
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アースラ艦内、医務室
「…以上が、これまでの事件の内要です。脱走した二人の犯罪者、ならびに脱走の手助けをした三人は厳重にバインドを架け護送中、アッシュ・S・ベリー執務官は行方不明、現在調査チームを組んで、遺体の捜索に当たっています。また、ラクタイン・グレンワードは死亡を確認しました」
クロノは、リンディにこれまでの事を報告し、また、自分自身の無力さを嘆いていた
一人の死人も出さずに、事件を解決させるつもりが、結局、二人もの命を奪ったことになる
「そう…、分かりました。ところで、カイリ・ルーキスウィンド二等陸士は、どうしてる?」
「それは…、カイリ二等陸士は現在、自室にて寝ています」
最終話:それは、新たなる希望
アースラ内、仮眠室
カイリとアリーナが同じベッドで、寄り添うようにして寝ていた
「もう…、五年も待たせるなんて、待たせ過ぎっ…、でも…」
先に目を覚ましたアリーナが、カイリの髪を優しく撫で、静かに語り掛ける
「安心したよ…、ちゃんと良い男に育ってて」
アリーナは目だけを薄く開き、暫くカイリの寝顔を眺めていた
一定のリズムで呼吸を繰り返す、カイリの唇を見て、途端に体温が高くなり、鼓動が早くなるのを感じる
「私…、カイリとキス、したんだよね」
だったら、もう一度、と、アリーナがカイリの唇に近付いて
「ん…、んん…、アリーナ?」
「あっ…」
カイリの目が開いていき、アリーナの顔が更に赤くなる
「あのさ…、カイリ…、その〜ね…」
アリーナが、なんと言えば良いのか、迷っていると
ギシッ
「え…」
体勢を変えて、カイリが、アリーナに覆い被さっていた
「ちょっと…、カイリ?」
「アリーナ、さっきは不意打ちを食らったから、今度は僕が」
カイリの唇が近付いていく
アリーナは拒否せず、ゆっくりと穏やかに、カイリの唇を受け入れる
十秒よりも…
三十秒よりも…
互いの温もりを確かめ合うように、長く続けられた
そして、数分後
「時間だね」
アリーナから少し離れて、カイリが呟く
「うん、例え、どんな理由があっても、私はフェイトを傷付けて、バルディッシュを奪ったもんね」