銀魂
□悲しみの傷
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深夜──
眠い眼を擦りながら歯を磨き 何処のチャンネルも砂嵐だらけのテレビを消す。
シンと静まり返った部屋に軽く身震いしながら寝床に入った。
その瞬間─
グス…グスン…ズズッ…
と神楽の眠る押し入れから聞こえてくる。
神楽…?
俺は再び起き上がり 暗い部屋の中おそるおそる押し入れへ向かった。
そして押し入れの襖に手をかけた時
「銀ちゃ…銀ちゃん…」
中から涙声で呼ぶ神楽の声が。
「神楽…どうした?
…俺ァここにいるよ」
襖を開けると背を向けうずくまり 震えている神楽の姿があった。
「神楽…」
俺は神楽の肩を掴み そっとこちらへ向ける。
「銀…ちゃん…」
「どうした?具合悪いか?」
神楽の額にピタリと手を当ててみるが 熱は無い。
だがびっしりと寝汗をかいていた。
「嫌な夢でも見たか?」
「…パピーもマミーも兄ちゃんも…みんなどっか行っちゃって…私ひとりぼっちになっちゃったヨ…そんでネ 銀ちゃんもどっか行っちゃってネ……」
神楽は大粒の涙を流し 夢に見た事を途切れ途切れに話す。
いや…ひとりぼっちになったのは夢だけの話しじゃない…か
こんなガキでもコイツはコイツなりに色々抱え込んでるんだ
過去の癒えない傷を─
「俺は何処にも行かねーよ だから泣くな」
神楽の頭をヨシヨシと撫でながらもう片方の空いた手で涙を拭ってやった。
「銀ちゃぁん…うぅっ…」
中々泣き止まない神楽。
俺は狭い押し入れの中から神楽を抱き上げ ちっさいガキをあやすように背中をトントン叩きながら揺する。
そして俺の寝床に下ろした。
「ほら 俺がついててやる 何処にも行かねーから安心して寝ろ」
「本当…?」
不安げにそう言う神楽に俺は
「今まで銀さんが嘘ついた事あったか?」
と言い 神楽の額に張り付く前髪をそっとかき分ける。
そして俺も隣に寝転がり 子を寝付かせる母親のように 神楽の身体をトントンと叩きながらうるおぼえの子守唄を唄った。
そのうち神楽からは寝息が聞こえはじめ それを確認した俺は 仰向けになり眠る体勢をつくる。
「…おやすみ神楽」
聞こえてないだろうけど
一応─
眼を瞑り意識が遠退く中俺は
「銀ちゃん大好き…」
と言う神楽の声を聞いた。
夢か現実かわからないが
その後確かに
唇に何かが触れるのを感じた
それは俺の心の奥底に眠る癒えないはずの傷を
少し癒した
-END-