水仙

□第二話 夜空の下で一人思う
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星綺麗に輝く夜空の下で一人座りこみ空を眺め、複雑そうに顔をしかめる息子がいた

「よう息子ッ!!こんな所で何してんだ?」

「父さん・・・」

力なく俺を呼べば一度ため息をつき俺に背を向けるように座り直せば、膝の上に組んだ肘をおき、またその上から顎を乗せれば、小さな背中がさらに丸まり、小さく見えた。そしてその背中に近づき近くに座り込めば、先程息子がしていたかのように夜空を見上げれば、自然の雄大さに心を奪われる

「いやいや息子よ、夜空が綺麗だな〜!」

「・・・あぁ、そうだね」

「おいおいどうしたんだ?元気ないな」

「なぁ、父さん・・・俺。いや、何でもない」

「何だよ水くさいな。言いたい事あんなら言えって」

「・・・俺、見ず知らずの誰かと婚約したくない」

ポツリと呟かれた息子にかける言葉が無くなった

どうやら殿は呉との治安安定の為に息子と呉の良家の娘を婚約させるらしい。しかも、その良家の娘とはあの呉の師姓、陸氏一族の娘さんらしい。よくまぁ、そんな良家中の良家の子を娶ることが出来たなと心中で殿を尊敬するが、息子はやはり良家とはいえ、見ず知らずの誰かと婚約するのが嫌らしい。まぁ、この乱世において嫌なことを飲まないといけないのは致し方がない事だが・・・

「・・・まぁ、息子よ。案外、嫁さん良い奴かもしれないぞ」

「いやいやいや、良家の娘さんっしょ?絶対高飛車な性格してるって。それに噂だと双子で兄にそっくりだって。つまりそれってすっげぇ男顔ってことっしょ?」

再びため息をつく息子。思考経路が悪い方にしか行ってない。ここは一、父として。一、先人として一言言って、思考経路を良い方に持っててやるべきだろう

「なぁ息子よ・・・妻子を持つことは良いことだぞ」

「・・・何で?」

「守るべきものが出来るからだ」

「守るべき・・・もの?」

「あぁ、守るべきものが出来たら男ってもんは自然と強くなるもんだ」

「・・・ホントに?信じられないな」

「ホントだ!父さんを見たら分かるだろう?」

「・・・確かにね父さんの言うとおりだ。さすが父さん・・・やっぱりかなわないな」

俺の話に納得したのか、微かに笑みを浮かべながら俺に向けていた背を翻し俺の顔をしっかりと見ながら言えば、俺は息子の頭を優しくなでてやる。すると息子は照れたかのように笑いすっと立ち上がれば俺に手を差し出してきた

「ん、じゃま。こんな所にずっといても風邪引くだけだし、帰ろうぜ父さん!!」

「おうよ息子!!」

俺は息子の手を取った


(握った息子の手はいつの間にか大きくなっていて、寂しさと嬉しさが入り乱れる。そして子供だった面影はもうどこにもなかった)
 

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