頂き物(文章)

□幻想郷の夏に笑おう
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「おぉ……!な、何というっ……!」

その日。月影はとある紙を見て震えていた。そこに書かれていたのは。

・命蓮寺夏祭り
・守矢神社夏祭り
・中有の道夏祭り
・博麗神社夏祭り

これらが同一日開催であるということ。しかも、今日。

「今日は楽しくなる!今から武者震いが止まらぬ!」

軽く荷物をまとめると、月影はあっと言う間に家を飛び出したのであった。





幻想の夏に笑おう





まずやってきたのは命蓮寺。人里から一番近いというのもある。

「あら、いらしてくれたんですね?」

「おはようございます、白蓮殿」

中に入ってすぐに出会ったのは白蓮。

「今日はみんながお店を出してくれたんです。ぜひ一緒に回りましょう」

「白蓮殿は何かやられないので?」

「やろうとしたら、今日くらい聖は休んで下さいですって」

くすりと笑う白蓮と共に先へ進む。まず目に飛び込んできたのは。

「あ!聖と人間の便利屋さん!」

こちらを見て顔を輝かせたのは寅丸星。どうやら輪投げをやっているらしい。

「どうですか?順調ですか?」

「はい!ほら、人がいっぱいです!」

「せんせー!見て!入った!」

おやと思えば聞き覚えのある声。輪投げに並んでいるのは里の子どもだ。そして彼らを引率しているのは。

「あぁ、ちゃんと見てたぞ。すごいじゃないか」

「えへへー!」

嬉しそうに子どもと話す慧音と、少し離れた位置で見ている妹紅。

「妹紅殿は子どもと戯れないので?」

「月影か。そういうのはあまり得意じゃない。私は慧音に頼まれたいわば護衛だよ。子ども達を守るね」

なるほどと納得しつつ、もう一人輪から離れた存在。

「何をなされているので?ナズーリン殿」

「君は便利屋か。私はご主人様を見張る役目だよ。さっきからご主人様が色々そそうをしているのでね。フォローする身にもなってほしいよ」

やれやれと肩をすくめるナズーリンに苦笑いを浮かべる。とたんに後ろから星の慌てる声がする。ナズーリンはこの上なく呆れた表情を浮かべ、星の元に歩いていった。

「あら、妹紅じゃない」

「……輝夜」

人の目が騒ぎに向けられた背後で出会ったのは、妹紅と輝夜。その険悪な空気に気づいた月影は慌てて止めようとするが。

「……こんなところで殺し合いなんて、さすがに無粋すぎるわね」

「……そうね。明日以降にする。お前を殺してやるのは」

「ふふ。楽しみにしてるわ」

その会話の恐ろしさに口から泡を吹きそうになりながら耐えた月影の肩に置かれた手。

「良かったわ。祭りに上がるのが花火じゃなくて血飛沫にならないで」

「なんと恐ろしいことを言うのですか永琳殿!」

「あらごめんなさい。さて、姫も大丈夫みたいだから私達も祭りを楽しむとしましょう。ウドンゲ、てゐ、行くわよ」

「はい師匠!便利屋さん、失礼します」

「は〜い。ねぇねぇ人間、私と輪投げ勝負しない?」

「……結構です」

「あっそ」

相変わらずの永遠亭メンバーを見送った視線にわずかに映りこんだもの。垣根の向こうに立つ人影。

「お師匠様、私達に気づいたと思う?姉さん」

「気づかないはずないじゃない依姫。気づいて何も言わなかったのよ。前のレイセンもいた手前ね」

そんな会話をする二人。月影には会話は聞こえないが、髪の色は片方が紫で片方はくすんだ金色、紫の方は長い刀を下げて髪を頭上で侍のように結っているが、似た服に似た印象から姉妹とうかがえる。

二人は月影に気づくと、静かに去って行った。
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