ポケモンNovel

□君のそばで
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「全く…いつもいつも同じ事の繰り返し。
学習能力がないねぇ四番目のサァトシくんは」

「うっさいな!!
ポケモンの相性の違いを間違えただけだぜ?
それからその呼び方ヤメロって言ってるだろ!?」

「何してんだよシゲル、四番目!!今日も夫婦仲良く下校か!?羨ましいねぇ〜」

「あのなぁーっ!!どう見たら仲良く見えるんだよ!?
って!!お前もその呼び方やめろよな!!!」

サトシは声を掛けてきた同じクラスの男子に怒声をきかせて叫んだ。
(夫婦という点は気にならなかったのか?)

「へいへい、気が向いたらな。じゃあ!!また明日ぁ〜」

そいつは反省する様子もなく笑いながらヒラヒラと手を振って僕らの横をかけり抜けて行った。


「気が向いたらって何だよ…」

気が付くと、僕の隣でブツブツと文句を言うサトシの小さな声だけが聞こえた。

「はぁ…バカにされたくなかったらもう一度相性の基礎知識でも復習したらどうだい?」

「げっ!!
そんなのより実践で覚えた方がましだよ。
早くトレーナーになってポケモン貰いたいなぁ〜!!!」

サトシは目をキラキラさせて妄想しているようだった。

「君に選ばれたポケモンはさぞ不敏だろうね」

「んなにぃ〜!?」

素直に思った事を口にしたら、まるでオコリザルのような顔をして興奮するサトシがそこにいた。

「すぐそうやってムキになる…これだから四番目のサァトシくんは」

「なっ!!また言ったな!?
いつもいっつも四番目四番目ってぇ〜!!!!」

「気に入らないなら何でもいいから、これなら一番だって思うものを言ってみなよ、そしたら僕だって少しは考えてあげるよ?」

「そ、そんな…」

さっきまでの勢いがなくなり、顔を伏せて腕を組みながら急にサトシは考え込み始めた。
そんな幼なじみを見て、気付かれないように背中を向けて思わず笑った。
(どうせ考えたって何も思い付かないに決まってるしね)

サトシとは幼稚園に入るずっと前からの付き合いだ。
サトシが得意とするものは全て把握しているし、その中で僕が勝てなかったものなど何もない。

僕は勝ち誇ったように振り返り、今だ考え込んでいるサトシを見降ろした…
その時だった。


「あぁーっ!!!!!!」

「なっ!!」

【ゴンッ!!!】

いきなり顔を上げたサトシの頭が、見下ろしていた僕の額に見事に命中し、鈍い嫌な音が響いた。
「あぁ〜…びっくりした。
おいシゲル、大丈夫か?
まるでコダックみたいだぜ?」

「き、君ってヤツは…」

額に走った衝撃に思わず頭をかかえてしゃがみ込んだ僕を見てサトシは言った。
(こんの石頭めぇ〜っ!!!!)


「で…何か思い付いたのかい?」

ヒリヒリと痛みが残る頭を押さえながら聞くと、待ってましたと言わんばかりにサトシは瞳を輝かせた。

「あのさ、オレ達小さい頃からずっと一緒だったよな?」

「?ああ、毎朝君が布団に巨大な地図を描いていた頃から一緒だったね」

「ママ達には内緒で初めて裏山にポケモン見に行った時もさ」

「結局バレたけどね。
スピアーに追い掛けられたあげく迷子になってワンワン泣き叫ぶ君を引っ張って表道まで歩くのには苦労したよ。
調度パトロール中のジュンサーさんと出会えたのは奇跡だったな」

「今も学校の行き帰り一緒でさ、クラスも一緒でさ」

「家が近いからね。クラスって言ってもマサラは人が少ないから実際1クラスしかないし」




「ー…何でいちいち話突っ込むんだよ」

「いや、何となくね」

「何となくかよ」

「でさ、結局君は一体何が言いたいんだい?」

「?…あぁっ!!オレっていつもシゲルと一緒じゃん?
だからさ、要するに誰よりもシゲルのそばに一番居るのってオレだなぁって思ったんだよ!!!
な?どうだ?!これならオレだって一番だろ!?」

思わぬ発言に思考がしばらく停止し、無邪気に笑う幼なじみの顔を見て思わず体が熱くなるのを感じた。
(あぁ、今僕はとてつもなくだらしない顔をしてるに違いない)

なぁそうだろ?!と同意を求めてくるサトシに対して、僕はただ赤くなった顔を隠しながら頷くだけで精一杯だった。

天然って何て恐ろしいんだろうと思いつつ、内心かなり喜んでいたのは言うまでもない。





その翌日。
相変わらず四番目扱いをして話し掛けて来た僕にサトシは、話が違うじゃないか!!
と喧嘩を売りながらも、隣に立っていつも通り歩き始めるのだった。









(どんなに離れても、僕は誰よりも一番君のそばにいるよ)



●END●
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