ポケモンNovel
□Crossing emotion
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「あ〜美味かった!!な、ピカチュぅ…って今はいなかったんだっけ」
サトシは呼び掛けた空の席を見て苦笑した。
食べ終わり指に付いたポテトの塩を舐め取り、みんな今頃どうしてるかなぁとふと思う。
ここは、立ち寄った街の小さな喫茶店の一つ。
サトシは現在ここにたった一人でいる。
いつも一緒にいる相棒のピカチュウも、頼もしいが年上のお姉さんを見ると目がハートになる兄貴分なタケシも、いつどんな時でも大丈夫!!が口癖のヒカリもいない。
何故サトシは一人で行動しているのか。
話は数時間前。この街のポケモンセンターに着いてすぐに遡る......
「へ!?今日は二人とも出かけるのか!?」
サトシは裏返った声で身支度をしている二人の姿を見つめて言った。
「あれ?昨日サトシにも伝えておいたはずだけどなぁ・・・」
「サトシが忘れちゃってるだけよ!!私はちゃ〜んと覚えてるんだから!!
ねぇ、ポッチャマ?」
「ポッチャマ!!」
「ぐっ・・。で、でもヒカリは言ってなかったろ!?
な、ピカチュウ!?」
「ピ・・・・・ピカァ」
ヒカリと同様サトシも相棒のピカチュウに同意見を求めたが、小首を傾げて困ったような表情をしてサトシを見つめていた。
「ふふっ、ピカチュウだって私の話ちゃんと覚えててくれたのよね〜?
サトシったら…今日の朝みんなでご飯食べてた時に言ったじゃない。
“私も今日は別行動で買い物するね”って!!!」
「そ、そういえば・・・・・・」
サトシの脳裏に薄々と今朝の風景が蘇る。
「ってことは今日オレって一人なのか?」
「そうだなぁ…ピカチュウ達だって疲れてるだろうから、今からジョーイさんに預けた方がいいと思うしなぁ・・・」
「ピ、ピカチュウも…か?」
「ピカピ〜」
何故か瞳を震わせながら互いにギュッと手に手(足?)を取ってサトシとピカチュウは見つめあっている。
「おいおい、そんな大げさな・・・今生の別れでもないんだし。
オレ達だって用事が済んだらすぐに帰ってくるよ。なぁヒカリ?」
「そうよ!!・・・・・あ、だったらサトシ私と一緒に来る!?コンテストのグッツとかポケキャンの今月号とか見たいものが沢山あるのvv」
「ひょっとしてそれって・・・・・・」
サトシの脳裏を過ったのはつい最近の事。
すぐに終わるから買い物に付き合ってくれとヒカリに無理やりタケシと一緒に連れ出されたが、結局は荷物持ちが目的だったのだ。
見たいもの=買いたいもの
今回もその例外ではないだろう・・・・・。
「や、やっぱいいや!!オレ一人でブラブラしとくよ」
「そう?残念ね・・・」
(いったい“何”が残念だったんだ!?)
少し不満そうに肩を落とすヒカリを見て、サトシは断って正解だったと内心ほっとした。
「夕方には帰ってくるから、コレでランチは適当に食べててくれ」
タケシは持っていた手持ちの財布から通貨を何枚か出して別の財布をサトシに渡した。
「無駄遣いするんじゃないぞ?ランチ代のギリギリしか入れてないからな」
「タケシ・・・分かったよ」
思わずママみたいだよな、と言いそうになった言葉を飲み込んでサトシは返事した。
「じゃあサトシ。行ってくるな」
「私も行ってくるわね?
あ、サトシ。ブラブラするのもいいけど迷子にはならないでよ?」
「なっ!!迷子なんかなるもんか!!ヒカリこそ気をつけろよ!?」
「大丈夫大丈夫!!シンオウなら私の方が詳しいし」
「いや、二人ともいっそのこと迷子になってくれたら
オレがジュンサーさんの所へ迎えに・・「「絶対にならない!!!」」
ポケモンセンターのロビーでいつの間にか大声で騒いでいたらしく、その後三人はジョーイさんにきつく叱られてしまった。
二人と別れ、ポケモン達を預けたサトシは早速外に出かけた。
特に見たい店がある訳でもなく、ただブラブラと一人で街を見渡しながら歩いた。
時折ポケモントレーナーかと聞かれてバトルを申し込まれたが、手持ちが居ないため断ってしまった。
こんな時、本当にポケモン達が居ないことにガッカリする。
気を紛らわす為、サトシは「昼間はココが安い」とタケシに助言された店を足速に探すことにした。
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