ポケモンNovel

□密室エレベーター
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「なぁヒカリ〜、まだ見るのか?」

「見ーまーす〜!!だってデパート何て滅多に来ないんだもの!!たまにはゆっくり見て買い物したいじゃない!!?」

きゃーコレ可愛い、などと歓喜の声を上げながら商品を一つずつ手に取って眼を輝かせるヒカリを見ながら、サトシははぁ、とため息をついた。

ここは、旅の途中に立ち寄ったとある町のデパート。

食料などをそろそろ補給したいと言うタケシに同意してポケモンセンターにモンスターボール(ピカチュウやポッチャマも一緒に)を預けてから三人で出掛けたのだ。

だが、デパートに着いた途端。
「私も実は買いたい物があって♪」
と言い出したヒカリは、タケシの了解を得て嬉しそうにその場を離れて行った。

軽快な足どりで長い髪を左右に揺らしながら去って行くヒカリの後ろ姿を楽しそうだなぁ〜、と思いながら視線を向けていたサトシの気持ちを察したのか、「サトシもどこか行ったてみたらどうだ?」とタケシは声を掛け、サトシもついつい頷いてしまった。

もしもこの時、タケシの提案に同意せず一緒に買い物に付き添っていればどんなに楽だったろうか、とサトシは思う。

サトシ自身得に見たい物はなかった為、あの後結果的にヒカリの後ろに着いて歩く形になり、いつの間にか両手にはデパート内にある店の買い物袋を二つぶら下げている。
断じてサトシ自身の買い物ではない、断じて。

袋の隙間から覗いて見えたのは雑誌やモンスターボールを装飾するシール類。もう片方の紙袋からは布地のような物が見えた。

「はいサトシ、これもお願い♪」

「えっ!?またかよ〜!!オレそろそろタケシの所に戻りたいんだけど…」

「あっ、そうね。タケシも沢山荷物があるはずだし…私はもうちょっとだけ見たい物があるから後でまた合流しましょ!!!」

「っ!!よし、じゃあ一階の食料売り場に集合な!?」

「うん!!分かった」

お互い軽く手を振って別れたが、ヒカリの姿が再び店内に入るのを確認したサトシは、よっし…これでもう荷物持ちしなくて済むぜ、とガッツポーズを決めていた。

先程よりも荷物は増えて重みは増したが、荷物持ちから解放されたサトシの気持ちは軽かった。


「さてと、これからどーしようかなぁ…この荷物持ったまますぐにタケシと合流して歩き回るのも大変だしなぁ…」

(下手すればヒカリの荷物に加えてタケシの荷物持ちを…)

最悪なシチュエーションを思い浮かべたサトシはぶんぶんとクビを振った。

「とにかく、今はどこかゆっくり座れる場所ないかなぁ…デパートの中って結構騒がしいからなぁ〜」

あれやこれやと思案しながら、取り合えず近くにあったエレベーターを見つけ、デパート案内に書かれた各階の特徴を読み上げる。

「今いるのが3階かぁ… 5階がレストラン、腹減ったなぁ〜、昼飯まだだったもんな。あっ、7階って屋上なのか…よし、決めた!!」

サトシが目の前にあるエレベーターの「↑」ボタンを軽く押すと、3列に並んだ残り2台のエレベーターのボタンにも同時に光が灯った。

「オレ、何かカッコイイかも」

何がどう格好良いのか、エレベーターの仕組みに感動したサトシは何故か優越感に浸っていた。

待ち時間中、特に誰もエレベーター付近には寄って来ず、「カン」とエレベーター独特の到着音が鳴った。

扉が開くと、中からヒカリと同じくらい(サトシも同様の年代だが)の女の子三人組が中を空にして出て来た。

その三人と入れ代わる様にサトシは意気揚々と中に乗り込む。

今利用しているのは自分だけだ、とまたまた優越感に浸ったサトシは軽快に「閉」ボタンを押した。

「えっと、7階…」

誰もいないのを良い事に、遠慮なく手に持っていた荷物をドサッとエレベーターの隅に置く。
階数ボタンを押して任務完了、とばかりにサトシは肩の力を落とした。

ガタン、と音を立ててエレベーターはスムーズに上へ登って行く。

「へへっ、一人で貸し切りって感じで良いな〜。楽ちん楽ちん♪上の階まで歩くのは大変だけどエレベーターは目ぇ摘むってても勝手に動くから便利だよな!!!」

目を摘りながら軽く揺れる振動に身を任せる。



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