ポケモンNovel
□未完成と完成
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小さい頃から一つ一つ。
積み上げてきた理想の形…
褒められれば停滞し、批判されればまた積み上げた。
完璧な人間なんていない。
そうおじいさまは言ってくれたけれど。
それでも大人達の目線が気になって…
わずかな隙間を埋め尽くし、欠点を残らず排除する。
もっと高く、もっと高く。
見えない何かを必死に積み上げて、それは知らぬ内に自分の身長を遥かに越えた。
完璧すぎるくらいに綺麗に積み上げたソレを見て、少しだけど優越感が湧いた。
でも…、何か足りない気がした。
「なぁ、お前何やってんの??」
図々しくてマヌケな声が掛かった。
積み上げてきたソレに塞がれて姿は見えなかったけど、珍しく僕の空間に訪問者…いや、侵入者が入って来たようだ。
「君にはおよそ理解出来ない様な凄い事をしていたのさ」
「楽しいか??」
「快楽を最初から求める事何て出来ないよ。完成仕切って初めて得られる物なんだから」
「じゃあさ、それってまだ完成してないのか??」
「完成…したと思ったんだけどね。何か足りないみたいなんだ、最後に何か…何かもっと大切な物がきっとあるはずなんだ。」
「ふ〜ん…そっか!!」
「ああ、だから君はさっさとー…」
邪魔だから帰ってくれ。
そう言おうと思った瞬間、目の前の見えない何かがいきなりガラガラと音をたてて崩れ始めた。
いや、崩されたんだ。
目の前でバカみたいに満足気に笑うこの少年に。
「ははっ、押さえたら結構簡単に崩れるんだな!!」
「な…っ何て事してくれたんだ!!僕がコレを積み上げるのに一体どれだけ苦労したと思ってるんだ!!!!」
「だって邪魔じゃないかこんなの!!」
崩れ落ちたソレを指さしながら、不満そうに少年は僕を見た。
「僕にとっては必要なものだったんだ!!アレがないと僕は完璧になれない、不完全な物体のままなんだ!!」
「は!?不完全?!物体って何だよ!!お前はお前じゃないか!!!それ以外の何でもないっ!!!」
「君に僕の何が分かるって言うんだ!!もう放っておいてくれ!!!」
「そんな事したらまたお前はあんな物作るんだろ!?そんなのオレは嫌だ!!」
「君には関係ないだろ!!僕に構うな、何で放っておいてくれないんだ!!」
「オレはもうお前と仲良くなるって決めたんだ!!だから絶対放っておかない!!」
「な…っ!!!」
言葉が出てこなかった。
言い返したいモヤモヤとした気持ちが喉まで出て来ているのにそれが言葉にならない。
思えば今までこんなに感情的になって自分の気持ちを人に向かって伝えた事が、叫んだ事がなかったのだから当然だ。
結局だんまりになってしまって沈黙。
そんな僕を見た目の前の少年の表情が途端に柔らかくなった。
「なぁ、オレお前の事もっと知りたいんだ!!お前は完璧っていうのが好きなのかもしれないけどさ、オレは別にそんなの要らないんだ。だからー…」
白い歯を剥き出しにして、何の企みもないだろうその笑顔が眩しくて。
「一瞬に行こうぜ!!」
どこへ行くのか、何て言う疑問は浮かばなかった。
ただ、差し延べられた手をしっかりと握り返した僕にはもう、何のためらいもなかった。
足りなかった一番大切な何かを、きっとコイツは教えてくれる…
そう、確信してー…。
。