ポケモンNovel

□ある晴れた土曜日
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「おっし!!早速はじめるぞー!!こっちの荷物は衣類でこっちは食器で…」

「…オイ」

「あー、コレ教科書かぁ。辞書も入ってるから重いんだよなー」

「オイ」

「えーっと…あとはコレコレ!!コレが一番大事なんだよな〜!!
これはやっぱり居間に置くべきだよな♪」

「…話を聞かんかーーーーいっ!!!」

「ふげっ!!!す、スリッパ!?何でスリッパで叩くんだよ!?…ソレで叩くのはゴキ●リくらいだろ!?」

「そんな事はどうでもいい!!!まずは…まずはこの状況を説明しろーーっ!!!!」

中学1年生になって初めて迎えた土曜日、天気は晴れ。
いつもと変わらない朝を…迎えるはずだった。



ある晴れた土曜日


まず僕が目を覚ます原因となったのは2度3度としつこく鳴ったインターホンの音。
それがこの騒動の始まりの合図だった。

学生にとって土曜の朝は日曜日とさほど変わらない。
寝ているヤツがほとんどだろう。
普通ならここで母親が応対するのだろうが、何せ僕の両親は共に出張の多い社会人だ。
家にいる事なんてほとんどない。
たまに帰ってきては土産話を聞かせて去っていく…いわばゲスト的存在だ。
昨日は二人揃って入学式に会わせてようやく帰ってきたと思ったら、「当分は帰れないからあとはよろしく!あ、お金はちゃんと銀行に振り込んでおくからね♪」と一言残してまた出て行ってしまった。

いくらおじいちゃんが時々様子を見に来てくれるとはいえあんまりだ。

…よって、ここには僕一人しかいない。

「ったく…こんな朝早くに何だって言うんだ」

重たい体を無理やり起こし、寝ぐせを軽く直してからリビングに設置されたインターホンの受話器を取った。

「もしもし」

「あ、おはようございます!…っこしセンターです。宅急便があります」

「……ああ、今開けます」

マンション住まいの為、外部から人が入るには扉の開錠が必要だ。
少し寝ぼけていたせいか、声も少し聞きそびれてその反応が鈍った。

(どうせまた父さんか母さんからの届け物だろう。さっさと受け取ってまた寝てしまおう…)

再びインターホンの音が聞こえた。

わざわざ再び受話器を取るのは面倒だ。
そのまま僕は玄関へと直行したー…そして。

「よっ!!茂!!!おはよー!!!」

「さ、智?何でお前が…」

「あ、その荷物こっちにお願いします!!」

「はい、じゃあ先に割れ物から入れていきますね?失礼しますー」

「え!?ちょっと…!!!何で家の中に入って!?」

「おじゃましまーす!!…じゃないか、ただいまー!!」

智の背後にいた体格のいい男達が次々と部屋の中に入って行く。

(なんだ!?一体、なんだっていうんだ!?)

よく見れば、男性達の制服にははっきりと「らくらく引っ越しセンター」とししゅうがしてあった。
意味が分からずパニック状態になった僕を面白そうに見ながら智は笑う。

「あ、そう言えばオレたちクラス一緒だったんだな?宜しく頼むぜ!!」

僕の背中をバシバシ叩きながら智はマイペースに話す。
状況が理解出来ず、あれこれ悩んでいるわずかの間に奥のリビングは大小の箱で埋め尽くされていた。

◆◆◆



「それでオレの母さんもしばらく家に帰ってこれなくなってさぁ〜」

「…つまり、君と同棲しろってことか?」

「ああ、そーゆー事だ!幸成じいちゃんもそうしろって言ってたぜ!!」

「おじいちゃんが!?」

「ああ!!あ、あとコレ。茂のお母さんからの手紙…ってかいい加減スリッパ置けよ、怖いだろ!?」

「手紙??」

叩かれた頭部をさすりながら、持参したリュックから一通の封筒を智は僕に差し出した。
スリッパを放り投げ、封筒をばっと勢いよく取り上げて中身を開けるとそこには丁寧な文字。
間違いなく母の筆跡だった。


茂へ

いつも貴方にはさみしい思いをさせていましたね。
芸能のお仕事も気分転換にと思って勧めたけれど…やっぱり普段家にいる事も多いでしょう?
父さんも母さんも本当に申し訳ないと思っているの…

でね!!私考えたの、どうしたら茂が寂しくなくなるか!!
お父様…幸成おじいちゃんとも相談したら、それなら同じ年ごろの子を持つ花子さんに相談してみたら?って言うお話になって…。
そしたらあらビックリ☆花子さんもお家の事情で智くん一人残して実家に帰らないといけないって言うのよ!?それを聞いて私、ひらめいたの!!
そうよ。幼馴染みなんだし、いっその事二人で同棲させたらっ…

【グシャッ】

(母さん…あなたって人はーーーーっ!!)

途中からハイテンションになり始めた母の手紙を最後まで読まずに握りつぶした。
つまりは、これは全て自分の母が考えた事なのだ。

「し、茂…くん。顔、怖ぇよ??」

僕の顔を覗き込みながら智は恐る恐る話をかけてきた。

(よく考えれば智だって被害者なんだ。仕方ない)

「悪かったね、どうやらこれは僕の母さんの陰謀…考えだったようだ。
これからその…宜しく、な」

「へ??いや、別に悪くないじゃん!!オレ茂と住めるんなら全然問題なし!!
茂の母さんから話聞いた時は実は嬉しくってさ…へへ。よろしくな!!」

少し顔を赤らめた智が恥ずかしそうに笑った。
そんな智につられて僕もつい口元が緩んだ。

(ああ、案外うまく行くかもしれない)

少し胸の奥が暖かくなるのを、僕は確かに感じた。

「よし、じゃあまずは片づけからだな…そんなに量もないし二人ですれば夕方には終わるだろう」

「あ!!じゃあまずはコレから!!これが一番大事なんだ!!居間…リビング?にコレ置こうぜ!!」

段ボールの中でもひときわ大きい箱から智はソレを取り出した。

「・・・・・コレ、を?」

「おう!!!いいだろーー♪」

それは、自分でもよく知っているキャラクターのぬいぐるみだった。
赤いほっぺ、黄色のシャツ…ギザギザもようの僕のベストフレンドーー!!!!

「そんな…そんなでかいピカチュウ、ここに置けるかーーーー!!!!」

「えーーーーっ!!!なんでだよ!?」

「なんでだよ、じゃないだろ!!?こんなでかいの置いたら狭い狭い狭い!!!
食事だってここでするんだぞ!?それにTVが見ずらくなるだろ!?」

「えー!!そこを何とか!!!頼む!!!」

「無理、無理無理無理絶っ対ムリだーーっ!!!!」

「茂のケチったれーーー!!!」

「智が分からず屋なんだーーー!!!」




ー…こうして、僕と智の騒がしい同棲生活は始まったのだった。




ーEND−


あとがき...
何か、パラレル書くの楽しいかもです。
今までセリフだけの短文で書いてきたのでこうやって文章付けるとイキイキとしていて嬉しいです←
でも、初めて読まれた方は「何コレ?」って感じですね。
詳しくは「二人の関係」を読んで頂くと分かってもらえるかと思います。

ここまで読んで下さった皆様に感謝です!!!(ペコリ)





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