のべるす

□屑霊MIX
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 バトラーくんとメイドちゃん


とある屋敷の庭園内。

「雛森ー、雛森ー……
 ったく何処ほっつき歩いてんだ……」

その屋敷の執事、日番谷は迷子になった雛森を探していた。
この屋敷の庭はとても広い。
何人もの一流の庭師が整備しているだけあってとても調ってはいるが、庭園内部を知り尽くしていない者が正確に歩くにはテーマパークのように地図が必要である。
最近来たばかりの彼女は、勿論道など把握している訳もなく…恐らく迷子になってしまったのだろう。屋敷に飾る花を摘みに出たきり戻って来ないのだ。
探すのは庭を知り尽くす庭師が適任だが、見習いメイドの世話係に何故かなった日番谷はそれをよしとしなかった。
雛森が迷子になったのは自分の責任と思ったからだ。
幸いにも彼は寝る場所を探す為に庭を散策するのが趣味だ。庭園内は熟知している。
それでも広い土地から雛森を探し出すのは重労働だが。


「…はァ…………」


ため息を付いた。
本当に彼女は何処へ行ったんだ。
さすがに足が重くなったので、一先ずお気に入りの場所のひとつの木陰で休むことにした。


そよそよと穏やかな風で、木葉が揺れる音が心地よい。
目を閉じて耳を静かに澄ませる。


がさがさ。

がさがさッ。


「きゃッ!!!」
「ん?」

おかしな音が頭上から聞こえて、そちらを見遣る。
一瞬だった。
白いニーソックスとそれを吊すガーターベルト。視線を辿ると僅かに見える肌の色。そして、とっておきの純白が目に焼き付き、
雛森が降ってきたのは。


「!!!」


脳によく記録された部位が顔に当たり、頚に大ダメージを受けた。


「ふえ………?」

雛森はおかしな感触に下を見る。
すると、一体どんな状況で自分は墜ちたのか、日番谷の顔をお尻の下敷きにしていた。
気付いて彼女は真っ赤になってそこからお尻を除けた。

「ひ、ひ、ひひ、ひつが…日番谷くん!!!!
 大丈夫!!? しっかりして」

呂律は回っていないが、綺麗に敷いてしまった日番谷の身を案じた。

「…雛森…………何で……木に登ってんだ…………」


彼は何とか無事だった。
そのまま間髪入れずに理由を聞いた。


「えぇと…… それは、道に迷ったから…高いところから見たら屋敷が分かるかなぁて………
 それで…降りれなくなって」


日番谷は頭が痛くなった。

「…馬鹿か」
「ば、馬鹿って言わないでよ!」
「つーか、俺の方が先輩なのにため口聞いてんじゃねえよ」
「だって日番谷くんまだ子供じゃない!」
「15も20も変わんねえだろ」
「変わります!私は大人なんだから」
「…いい大人が木に登って降りれなくなるか? つーか普通は木に登んねえ」
「うぅ………」
「…、此処でうだうだ言っても仕方ないだろ……
 戻るぞ」

日番谷は立ち上がり、さっさと先に歩き出した。

「ふわっ! は、はい!」
「…何で返事だけ丁寧なんだよ」
「条件反射かな…?」






080413 Up



  後記。

雛森嬢メイドは予てからやりかったので。日番谷くんがフットマン(従僕)ではなくバトラー(執事)であるミソです。
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