SS2

□温泉でしちゃおう
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「う、うちより広い!」
信じられないとでも言うような声をあげて部屋へと入る。
部屋が二つにメイクルーム、ジャグジー、窓は雪見窓までこしらえてあり、ここぞとばかりに贅沢なしつらえだ。
「でもさすがにそのセリフは刺さるなぁ。」
アキラの後を追うように源泉も部屋に入り、少し落ち込んだ様子で座椅子に腰掛けた。
「へえ、飲み物も何種類もあるのか。アキラ、茶、どれ飲みたい?」
「え?それ、いいのか?」
「ああ。・・・・・・備え付けの菓子も食っていいんだぞ。」
「そうなんだ。」
パタパタと部屋を行き来する。
当人は全く気づかないようだがこれでは小さい子供と同じだなと源泉は内心思い顔がほころぶ。しかしこうしてみると本当に子供と来たお父さんな気分になってきた。
「じゃあ、これは?」
メイクルームから歯ブラシをみつけたのか、源泉の目に写す。
「ああ、それも、そこにある一式は全部使ってオッケーだ。」
「なんで?」
「いや、なんでって言ってもな。それも全部金額に入ってるから。」
ふーんと、納得した様子で今度は押入れの中を探る。
「これは?浴衣?」
「それも着ていいんだぞ。」
そんなやり取りをしていると、ガチャっと、アキラが何かを開ける音がした。
「あ、アキラ、それは・・・」
その聞き覚えのある音にはっとして源泉がアキラの元に駆け寄る。
「ここにある飲み物も?」
冷蔵庫だ。すでに時は遅く、アキラの手には瓶ビールがすでにあった。
「・・・・それは、有料。」
「え????うそ、え、どうしよう。」
「せっかくだから飲むか、な?アキラ。」
「まだ飯すら早い時間だぞ。」
「こういうところの醍醐味ってやつだよ。」
そういうものなのかとなんとなく理解し、連れられてテーブルの前にアキラも座る。
源泉がコップをならべて栓をはずすと、瓶から小気味良い音をさせて琥珀色の液体が注がれる。
「よし、乾杯するか。」
「ああ。」
「んーーー、じゃあ、改めてあけましておめでとう。」
「何日経ってると思ってるんだよ。」
「いやぁ、年明けはこんなにゆったりできなかったろ。仕事もあったしな。」
そういえばと振り返ってみる。
思いもかけなかった旅行は、存外これはこれでゆったりできてよかったのかもしれないなと思うと、コップに注がれた飲み物が途端においしそうに映ってきた。
「そうだな、そういうことにしておく。」
コップをくっつけると、ガラスの乾いた音が響いた。
そして時間も経ち、別室のこれまた贅沢な日本庭園付の個室で夕飯を取り、温泉に入りとめったに無いくらいにくつろいだ時間を過ごす。
ほどよくアルコールが回った体が、敷かれたふかふかの上質なふとんに埋もれる。
「いいだろ、たまには温泉も。」
隣に寝転がるアキラの瞳は少しとろんとしており、心地良さそうに布団の感触を肌に感じている様子だ。
「悪くない。」
アキラの楽しそうな反応に、源泉も満足する。
「今回は俺の成果だぞ、わかってんだろうな。」
「わぁかってるって。・・・おい、何してんだよ。」
おもむろに源泉がうつ伏せになっているアキラの上にまたがる。
「おいちゃんがマッサージしてやろうと思って。こういう時なんてそうそうないからな。」
そう言うと、アキラの肩を掴み、揉み解す。
「ずいぶんかってええええなぁ!お前さん、けっこう肩こりなんじゃないのか?」
「あんたが飲み歩いてる間、誰が仕事してたと思ってんだよ。」
「すいません・・・・。」
恐縮して少し指に力が入ると、痛そうなアキラの声があがる。
少し強さを弱めてやると、気持ち良さそうに言葉無く体を預けてきた。
「ぅん、そこ・・・・・・すごい、いい。」
肩甲骨の下あたりを指で押してやる。
「悪いな、こんなに疲れさせちまって。」
「それはお互い様だろ。次、交代するか?」
交代する気など源泉にはさらさらなく、いや、とだけ答える。
なんとなく揉んでやろうと思って行動したのだが、アキラには少し大きめの浴衣が見事にその細いおみ足を露にさせてくれ、浴衣の合わせ目からは滑らかな肌が垣間見える。
とてもとてもおいしすぎるシチュエーションが、源泉の悪戯心をくすぐった。
背骨から腰へと揉んでいた指が腰より少し下へと伸びる。
「・・・んっ」
すこしくすぐったいような、でもほぐされて心地よいような、なんとも言えない感触を覚えた。
「ちょっと!おっさん!」
さらに下へと伸びた手に、アキラが制止の声をあげる。
「何してんだよ!」
「ん?マッサージ、だろ?」
アキラの反応をわかってて源泉は耳元に顔を近づけて答える。
「ていうか、も、もういいから。」
このままだと何をされるかおおよそ検討できたアキラの肩を体で押さえつける。
「だーめだ、おいちゃんのマッサージは全身マッサージだからな。」
「だからもういいって!」
そう言って逃げようとするが、脇の下から手を入れられて抱きすくめられる。
「やっぱりいいな、浴衣は。」
この酔っ払いがと、後の源泉の頭をはたきたい気分ではあったが、酔いが回ったアキラの体は抵抗するのも少し億劫な状態で、大人しく抱かれる。
「ほら、ここから手が入る。」
「や・・・。」
脇の空洞となった隙間へと源泉の腕が滑り落ち、中へと潜らせると、胸の突起に指があたる。
ほぐされた体が少し敏感に反応し、触れられたそこが熱を持ったように熱く感じた。
「また来ような。」
源泉の唇がアキラの首筋を伝うと、アキラは顔を背けて瞼をぎゅっと閉じる。
「来ない、どうせ・・・こうやって・・・・・結局することはおなじ・・・んっ。」
「シチュエーションってのも大事だろ?たまに違うところで・・・いつもとはまた違う気分になるだろ?お前も。」
脇の下から挿しいれた指が、そのまま中から浴衣の合わせ目をずらしていく。
「変なもん、見すぎなだけ・・・だろ、親父が・・っ・・・・・っ」
少し紅潮した肌色が広がり、鎖骨から助骨へと指が体のラインを辿って滑らせて行く。
「・・は・・っ」
震えるような吐息が漏れ、源泉の指が、唇が、アキラの体に触れる度にシーツを掴む手が、あるいは強まり、あるいは弱まりと、力の緩急が定まらなくなる。
首の付け根を大きく舌で這わせられるその湿る温かさが、耳元にいやらしく響き、体が強張るのを感じた。
「言ってくれるなぁ、ほんと。まあ、かわいいから許す。」
「かわいいって・・・どこがだよ!そういうの言われても・・っっ!んぁ、や、どこ・・さわってぇ・・っ!」
上肢を弄っていた源泉の手が、帯の下の合わせ目からおもむろに下着へと手を伸ばす。
「ここが、かわいい。」
下着の上から少し熱を帯びたそこを指の腹でなぞりあげられる。
「・・!」
触られるよりも、言葉の羞恥の方が勝り、肩をあげてジタバタと逃げようとアキラはもがいた。
予測していた反応通りなアキラが面白く、一向に自分に顔を背けるアキラの表情を見ようと顔をさらに近づけて隙間からキスをしてやる。
「いやだって・・・!」
荒く呼吸をして、顔中真っ赤にされて睨まれる。
「じゃあ、今日はもうやめとく・・・か?」
いやだと言うなら仕方が無いと体を起き上がらせると、うつ伏せにしていたアキラが体を背けて源泉を見る。
「なんで・・・。そういうことばっか言うんだよ。」
まっすぐ見つめられるが、たまらず、アキラは目を背けて言葉をつなげる。
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