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□なかよしキラル三兄弟
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雪がこんこんと降り注ぐ冬の寒い朝。
ストーブがまだついていない部屋は冷気がたちこめ、階下から暖かい朝食の香りがゆるゆると入り込んでくる。
トントンと階段をあがってくる足音。
それにすらまだ気づかずそれぞれが健やかな寝息をあげている。

ガラ!!!!

「いつまで寝ているつもりだ!起きろ!!」
寝ていた3人の母が部屋に入りざま怒鳴る。
「っあい。」
飛び起きたのは末っ子の蓉司だ。
「・・・・・・・。」
無言で不機嫌そうに眼をこすりながら体を起こしたのは長男のアキラだ。
そして、怒鳴られてもなおスピーっと寝息を立てているのが次男コノエだった。
「このたん、おっき。」
蓉司がコノエを揺さぶると、気持ち良さそうにコノエが寝返りをした。
ばちん
「!!!!!い・・・・いぢいいいぃぃぃぃ、ちっぽびぢっていっだあああああああああああ」
コノエのしっぽが蓉司のほっぺに直撃し、さほど痛くはなさそうなのだがびっくりした蓉司はすでに涙目で母に惨状を訴える。
「コノちゃん、起きないとまたお母さんに怒られるよ。」
アキラがコノエを揺すると、今度は足で蹴飛ばされた。
「ーーーーーーー。」
なんで起こしただけなのに蹴飛ばされないといけないのかとアキラは睨みつけ、そして、
「コノちゃんのばかああああ!もお早く起きろよおおお!けったらだめなんだからああああ!」
上のお兄ちゃんも涙目でコノエを叩きながら起こし始める。
母にすがりついて泣きわめく末っ子、ぽかぽかと叩きながら泣きわめく長男、そして未だ起きない次男。
そこに、一番フラストレーションが溜まっている者が、おもちゃの戦隊物の剣を床にドン!と突き刺した。
「きさまらあああああああ、いいかげんにしろおおおお!!起きるか死ぬかどっちかにしなさい!」
一気に3人があるいは泣くのをやめ、あるいは目覚め、正座する。
3人の母は起こると怖い。本当に怖い。シキお母さんは怒らせたらいけない。
「早く着替えてこないと朝ごはんはないと思え。」
ずっかずっかと階段を下りていくシキママ。
「コノちゃんが早く起きないから怒られたじゃないか。」
「えーーー、だって、アーちゃんおこしてくんなかったんだもん。」
いそいそと手の届く小さな箪笥から二人は着替えと取り出して着替えしながら口ぐちに愚痴を言い出す。
「おれ、ちゃんと起こしたもん。」
「おこしてないよおお。」
「起こしたもん。」
「だってコノおこしてもらってないもん。」
「起こしたもん。」
「おこしてないもん。」
一触即発になる。
すると、脇で。
「ぼたん・・・・。」
二人が言いあっている最中、蓉司は一人でボタンと格闘していた。
「ようちゃん、ボタンつけてあげる。」
「コノもコノも!つけてあげる!!」
喧嘩しているのも忘れ、二人は蓉司に群がり、ボタンつけ合戦にかかる。
「コノちゃん邪魔!おれがつけてあげるんだってば。」
「コノだっておにいちゃんだからつけたいんだもん。」
今度はアキラとコノエが蓉司を囲んで喧嘩をし始める。
「アーちゃんばっかずるいよおおお!」
「だってコノちゃん、ボタンかけまちがってるんだもん!」
ぎゃーぎゃーと騒ぎだし始める。
「・・・・・・・・。」
蓉司が涙目でビビりだす。
(ようたんがぼたん、たんとちゅけらえないかや・・。)
悲観した蓉司はボタンもかけられてない状態で部屋を出ていく。
二人は気づかずに喧嘩を辞めない。
部屋を抜け出すと、すぐに何かにぶつかりごろんと転がってしまった。
今度こそ泣きそうになったが、ぶつかった何かを確認すると、むっくりと起き上がった。
「とおたん、・・・・・おきがえ。」
父である。
「おにいちゃんは?」
蓉司の言葉少ない性格はどうも父譲りなのか、蓉司は顔を左右に振って部屋を指さす。
喧嘩をしている。
蓉司を抱き、部屋に入る。
「あ!おとうさん!」
「おとうさんだ!」
二人は今度は父に窮状を訴えるが、父は聞いているのか聞いていないのか、一言だけいう。
「喧嘩しているとお母さんに怒られる。下、行くぞ。」
「はああい。」
父は母と正反対で怒らない。大学の先生でいつも本を読んでいる不思議なお父さんである。
お父さんはナノだった。

こうして、シキママ、ナノパパ、キラル3兄弟の一日が始まるのであった。

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