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□りんとしていたい
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指輪戦後、オレ達ヴァリアーの幹部はボンゴレの監視下に置かれた。
オレとザンザスとルッスーリアはひどい怪我を負っていたので、ボンゴレが囲っている病院に担ぎ込まれた。

その中でもザンザスは特に重症だ。
命に別状はないが、今もずっと意識がないらしい。

オレはというと、車椅子生活から松葉杖をつけば歩ける程度には回復していた。
今は自分に宛がわれた病室(監視カメラ付き)のベットの上に寝転がっている。

外はもう日が沈む時刻になっているが、明かりを点けるのが面倒なので室内は薄暗い。

今日も何回かザンザスの顔を見に行っているのだが、依然としてあいつは眠り続けている。

8年間凍らされて、目覚めてまさにその体であんな大バトルを繰り広げたのだ、当然の結果であろう。
今の冷え切った頭ならわかる。
少しでも休ませればよかった…もっと体力が回復するのを待つべきだったのだ。

しかしきっと、口にこそ出さないものの、ザンザスは焦っていたのだろう。

失われた8年という長い年月を取り戻す為に。

しかもザンザスが目覚めるほんの少し前に、義理の父である九代目が前々から目に懸けていた家光のガキが、九代目の指令通りに六道骸を倒したという事実があったのだから尚更だったと思う。

何より自分が居ない間にそんなやりとりがあったなど、なんて不愉快な話だろう。

抑えていた怒りが込み上がってくるのをスクアーロはなんとか鎮めようとした。
この怒りは他でもない、ザンザスのものだと自分に言い聞かせる。

ザンザスの暴走−自分も周囲も見失い、それでも無理やり前に進もうというのは十分暴走と言えるだろう−を止める者はヴァリアー内にはいなかった。
いや、止められる者はいなかったと言えよう。

絶対的なカリスマ性と凶暴性を持ち合わせるザンザスに意見するものなど、ヴァリアー内にいるはずがない。
S・スクアーロを除いては。

しかし、肝心のスクアーロの胸中は喜びに溢れ、かつて憧れに憧れ抜いた人物との再会は、彼のザンザスに対するすべてを曇らせた。

ザンザスは、あいつは神でもなく悪魔でもなく、人間である。
そんなことはあの8年の間、身に染みて解っていたのに。
自分は過去とまったく同じ過ちを犯してしまった。

ザンザスもザンザスで、彼は他人に弱いところを決して見せない。
それは徹頭徹尾に徹底的だった。
それを浮かれきったスクアーロが見抜けないのも仕方がないというものだったかもしれない。

あいつが大丈夫と言うなら、それは大丈夫なんだろう無条件で思っていた。

今思えば何故そんなことを当たり前のように思っていたのだろう。
それは絶対の信頼のように思え、オレはそれを誇らしいとさえ感じていた。

“オレは、一生を懸けてこの身と忠誠を捧げられる主に出会えたのだ”

だけどそれは見せかけで、オレの妄想でしかなかった。
オレの世界はザンザスを中心に回っているように見えて、でもその世界にザンザスはいなかった。

あぁ、だからオレはこの世界に取り残されてしまったのだろうか。

オレはこんな世界を望んでいたわけじゃなかったのに。


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