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□りんとしていたい
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スクアーロは8年前と自分は何も変わってないと嫌悪感を抱いていたが、そう嘆いたものでもない。

指輪戦を通して、己の敗北を経験して、己が主の敗北を目の当たりにして、彼は変われたのだ。

いつからオレはこんなことを考えるようになったのだろう。
この病室の雰囲気のせいかもしれない。
ここはあまりに白くて静かで、何もすることがない。
衣擦れの音すらどこかに吸い込まれていくようで、なんとも不気味だ。

いつもオレはザンザスのことを考えていた気がする。
もちろん考えていない時だってあったが、その時の記憶はうすい。
まるで質量を持っていない。

“疑って”、“考える”こと。

スクアーロとザンザスの関係性には、それが決定的に欠けていた。

スクアーロは、自分とザンザスの関係を疑ったことがない。
ザンザスは、そもそも自分と周囲が関係しているなどと思ったことがない。

スクアーロの世界には、既に彼によって創られたザンザスがいるから、ザンザスは入ることが出来ない。
ザンザスの世界には、自分を受け入れてくれなかった者は決して入れない。
どうしても入れることが出来ない。

オレはあいつを主として近づいたが、ただの部下として見られるのは嫌だった。
それじゃ掃かれて捨てられて燃やされて終わりだ。

オレにはあいつが必要だったし、あいつにもオレを必要として欲しかった。
だから、友達のいないあいつの友達になれれば、特別になれると考えていたのかもしれない。
今思えば、オレは他のやつらとは違うというただの自己主張だ。

ザンザスから見れば、さぞ馬鹿で滑稽な男だと思っただろう。
それでも、確かに半年の間は傍に置いてくれた。
クーデターの戦力として必要という理由だと思うが、傍にいることを許してくれていた。

だが、今はどうだろう、状況が違っている。
オレの中では何も終わっちゃいないが、あいつの中ではもう何もかも終わったんじゃないか。
むしろこれ以上何を続けるっていうんだ。それはあんまりにも酷だ。

もうオレが傍にいる意味はないんじゃないだろうか。

そこまで考えるとスクアーロは既に真っ暗になった白い病室を出た。


<終わり>

次ページはあとがきです。


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