MAR

□そんな顔して
1ページ/8ページ

「ギンタ!一緒に帰ろ!」
明るく声をかけてきたのは小雪。
日直であるギンタは鉛筆を持ったまま日誌を眺めていた。いや、正確に言うと何も見えていなかった。
「・・・・・・。」
「ギンタ?・・・ギーンタ!!」
目の前でバチンと手叩き合わせる。
「!!こ、小雪。なんだよ。」
「ギンタ、どうしたの?・・・最近ずっと元気ないよ。」
「え、そんなことねーよ!メルヘヴンではバトルしてたから座ってばっかの授業が眠いんだ。ハハ。」
「・・・そっか。」
そのときの俺はあんまりにもぼんやりしてたから、小雪の心配そうな顔にすら気付かなかった。




「はー・・・。」
家に帰り、部屋で横たわる。
俺はずっと夢見てたメルヘヴンに行って、すげーいい仲間と会って、色んなバトルして、チェスの奴等を倒して、親父を戻して、世界を救った。俺の本当の世界『東京』に帰ってきて、学校に行ったり遊んだりこっちじゃ当たり前なことをして・・・これで良かったはずだった。
なのに、俺はまだ未練がましく引きずってる。・・・アルヴィスのこと。
「俺・・・不満なのかな。」
自分でもここまで引きずるとは思ってなくて、どーしていいのかわからなかった。
相談するにもする相手がいなかったし、第一そんな気にはなれなかった。
「・・・ちゃんと決別したんだ。これで良かったんだよな!」
そう言い聞かせるようにしても、自分の心にも自分の周りにも言葉を返してくれる声はない。
「・・・・・・止めよ。」
俺はそのまま深く眠りについた。






花、鳥、木。


城、町、家。


空、雲、太陽。


川、山、風。


人、妖精、ARM。



懐かしい・・・俺ここを知ってる・・・。

・・・ん?ARM??喋る岩や見覚えのある城・・・あれ?ここって―――・・・。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ