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□Piove
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しとしとと雨が降る駅前で、優と雅が傘をさして待っていた。
まだ小学校低学年の二人は、イタリアに行った母親が今日帰ってくると聞き、駅前でじっと待っているのだ。
くるくると雅の持つ傘が回る。黄緑の傘は楽しそうに回ると、今度は反対に回りだした。
水色の傘をさしながら、大人用の紺色の傘を持っている優は、雅の隣で渋い顔をした。
「雅、それ…うざい」
雅は優の視線の先が自分の傘だとわかると、笑顔を浮かべて答えた。
「そう?楽しいじゃん」
「ならいいけどよ」
優の言葉を最後に、二人は黙ってじっと駅の改札方面を見る。
その間も雅の傘はくるくる回り、駅前を歩く女性達はカワイイと話しながら去っていく。
「……お母さん、遅いね」
「そろそろ到着すると思うんだがな」
二人の前をアジサイの植木鉢を持った花屋のエプロンをした男性が通り過ぎた。雅は無意識にその花を目で追っていた。
「どうした、雅?」
「ううん。梅雨だからアジサイがキレイだなって思っただけ」
雅はそう言うと、改札から出てくる旅行トランクを見つけた。そして、その持ち主が母親だとも気づいた。
「優ちゃん、お母さん帰ってきたよ」
「ああ、そうだな」
雅は改札を出てきた母親に向かって駆け出した。
「転ぶなよ、雅!」
優はやっぱりレインコートを着て来た方がよかっただろうかと心配しながら、雅の後を追った。

Fin.
 

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