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□Io e nonno
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学校の帰り道、凛音は珍しく1人だった。
夏休み中にも関わらず、数学の補習が長引き、予定より遅い時刻の終了になってしまったのだ。
千冬は翠とアジトにいるため、多少遅くなっても大丈夫だ。しかし、凛音の足は昇降口を出た時から帰りを急いでいた。
空は灰色に覆われ、雷が鳴っているのだ。つまり夕立の前兆だ。
「降りそうですね」
今にも灰色の空を見上げながら呟くと、それに答えるように雨粒が凛音の顔に当たった。
あっという間に雨は本格的に降り出し、凛音の制服にシミを作った。
凛音は一刻も早くアジトに帰ろうと考えていたが、雨宿りをすることにした。
通り雨なので一時の雨が凌げればいいと凛音が雨宿りの場所に選んだのは、通り道にあった古い小さな社である。
社の屋根の下では他に雨宿りする人の姿は無く、古い戸に寄りかかり凛音は夕立が通り過ぎるのを待つとした。
「やれやれ……夕立とは厄介だな」
「そうですね」
男性の声がして、凛音は自然と言葉を返した。
しかし、この社には自分しかいないことを思い出し、自分の隣を見た。
そこには凛音の母、綱吉によく似た男が立っていた。
茶の髪に橙の瞳。イケメンと騒がれそうな美しい顔立ち。
黒いスーツに黒いマントを羽織っている。
凛音は一瞬間違えて自分の母かと勘違いしたが、顔立ちや喋り方、声から別人だと判断した。
「なんだ?」
ボンゴレT世は凛音を見下ろすと、凛音は笑顔を浮かべた。
「いえ……お会いできて光栄です、T世」
「………つまらん」
「はっ?」
T世の言葉に、凛音は驚きの言葉を返した。
「あの可愛いくて愛らしい]世の腹から生まれたにも関わらず、お前は霧の守護者似で可愛くない」
「…………そうですか」
初めてT世を目の当たりにした凛音は、T世の言葉を驚きながら残念そうに答えた。
「でも、お前は可愛い俺の孫の1人だからな」
T世の手が伸びて、凛音の茶髪に置かれた。
しばらくはただ置かれただけだったが、そのうち髪の感触を楽しむようにわさわさと手が動いた。
「僕から見たらひいひいひいひいお祖父さんですね」
凛音は指を折りながら代を数えた。
そうだなと言いながら、凛音の頭からT世の手が離れた。
「本当に綱吉の跡を継ぐのか?」
「僕に何か不満でもあるんですか?」
「いや……親子でドン・ボンゴレになる者は珍しくてな」
ボスの子供が必ずしもブラッド・オブ・ボンゴレの超直感を持つわけでも、死ぬ気の炎を灯せるとは限らない。
実子が必ずしも継げるわけではないのだ。
「お前は死ぬ気の炎も灯せるし、超直感もある。愛する者も良き仲間も居る」
弱り出した雨音とT世の声が混じる。
「お前はどんなファミリーと時代を築くんだろうな」
T世の手が凛音の頭を再び撫でると、T世の視線が空へ向く。
「そろそろ止むな」
「そうですね」
凛音も空を見上げながら答えると、T世の気配がふいに消えた。
「ひいお祖父さま?」
T世が居たはずの隣に凛音が目を向けると、そこには誰も居なかった。
空では灰色の雲の合間から太陽の光が差し込んでいた。

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