パラレル

□幸せなれ苦しまず辛い思いなどせず幸せになれ、僕よ
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悠弥が久弥の亡骸から離れて廊下に出ると、そこに翠が立っていた。
「・・・・・・悠弥?」
「翠っ!」
2人は一年ぶりの再会を喜ぶように互いを抱き締めあった。
「翠、ケガはしてない?久弥に乱暴されたでしょ?」
「それは大丈夫だ。それよりお前の肩・・・」
翠の手が悠弥の右肩に触れた。
「大丈夫、擦っただけだから。さ、帰ろう?悠希が待ってる」
悠弥が翠の手を取ったが、翠は首を横に振った。
「俺・・・・帰れない。帰る資格がないんだ」
「どうして?翠は悠希の母親でしょ?」
息子の名前を出しても翠は首を振った。
その時、どこからか赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。
その大きな声に驚いて悠弥は翠から視線をそらした。
「あの声は・・・?」
悠弥が尋ねた時、カチャと銃のセーフティーが外される音が聞こえた。
悠弥が翠に視線を戻すと、翠が悠弥の持っていた銃を自分のこめかみにあてていた。
「悪い、悠弥。翠弥・・・あの子はお前の好きにしていいから」
愛してると囁くと、翠は引き金を引いた。
銃声と共に翠が横に倒れる。
「翠・・・・?翠っ!」
悠弥が倒れた翠の体を揺さ振ったが、翠は既に死んでしまっていた。
再び赤ん坊の泣き声が聞こえて悠弥は翠から離れた。
泣き声を頼りに部屋に入れば大きなベッドの上で赤ん坊が泣いていた。
悠弥がその子を抱き上げると、泣き声はぴたりと止み、茶色の瞳が悠弥を捕らえた。
ふわふわとした金髪は悠弥や久弥と同じもの。
大きな茶色の瞳は翠の遺伝子を汲んだもの。
「お前は、誰の子なんだ?僕の子?それとも久弥の子?」
赤ん坊は見るかぎり生後数か月。
逆算しても悠弥の子とも久弥の子とも言える。
翠が死亡した今、真実は闇に葬られたまま――

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