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□Infanzia
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雲雀・リジェ・悠弥 with Adults

「ほーら悠弥、高い高い!」
巷で跳ね馬ディーノと恐れられる彼は、息子の悠弥を高く持ち上げた。日本から帰ったばかりの悠弥は、久々の父親とのスキンシップを楽しんでいるように見えた。
「楽しいか、悠弥」
「うん!」
「そうかそうか」
おどけない息子の笑顔に、ディーノも、周りにいる彼の部下達も笑みを浮かべた。悠弥は幼い頃の父親同様、ファミリーに溺愛されて育っていた。
妻(♂)そっくりの息子を溺愛するディーノは少々異常と言うべき域に達する事もあったが、基本は誰もが認める親馬鹿であった。
「悠弥は本当にいい子だなぁ。さすが俺のごぉっ!!」
悠弥を抱き締めたディーノの後頭部に、どこからか飛んできたトンファーがあたった。キャバッローネのボスにこんなことができるのは、今のところ1人である。
「悠弥が、誰の子だって?」
すごみを聞かせた声の持ち主は、悠弥の母親である雲雀恭弥だ。
「お、落ち着け、恭弥。ほら、悠弥もいるしな」
「悠弥、誰かに絵本でも読んでもらいな」
先程の声とは正反対な優しい声に、悠弥は頷くと日本から持ってきた絵本を抱えて、遠くで見守る部下達の方へ向かった。
「噛み殺す」
「きょ、恭弥。やめ、やめろー!!」
合掌しながら見守る部下達の足元に辿り着くと、悠弥はロマーリオのズボンをひっぱった。
「読んで」
「わかりました、若」
ロマーリオが絵本を受け取り床に座り込むと、悠弥はさも当然のようにその膝に座った。そしてが絵本を開かれると悠弥はわくわくしながら待ったが、中々話は始まらなかった。
「若、申し訳ないが……日本語は読めない」
そう、悠弥が読んでほしいと言った絵本は、日本語の絵本である。当然、イタリアマフィアの彼らがそれを読んであげる事はできないのだ。
「………役立たず」
悠弥は一言呟いた。その一言が周囲に与えたダメージは大きかった。

時は遡ること、一年前の日本。仕事で忙しい雲雀の代わりに、草壁が悠弥の面倒を見ていた。
「くぅしゃん、よんで」
「はい、いいですぜ」
草壁は悠弥の指した絵本を手にすると、悠弥を膝の上に座らせて絵本を開いた。が、その絵本はイタリアから持ち帰ったイタリア語で書かれた絵本。当然、草壁が読めるはずもない。
「若、申し訳ないです。俺はイタリア語がわからないので……」
「………役立たず」
2才の悠弥、春の話である。

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