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□Pupilla
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数十分後。
シャルたちから事情を聞いたスクアーロがベルフェゴールの様子を見にやってきた。
スクアーロが部屋の中を覗くと、ベルフェゴールは変わらずソファの上で膝を抱えていた。
機嫌を損ねた直後は何を言っても火に油だ。
それを知っているから洗濯を済ませてから来たのに・・・・?
不思議に思いながらそっと近付いたスクアーロはベルフェゴールを見て合点がいく。
ベルフェゴールは眠ってしまっていたのだ。
膝を抱えた格好のまま、肘掛けを枕代わりにして。
ついさっきまで泣いていたのか頬には涙の跡が残っている。
スクアーロは黙ってベルフェゴールの頭を撫でた。
ベルフェゴールは自身の瞳を見られることを何よりも嫌う。
王族という純血を重んじる家系。親族同士という濃い血のせいでアルビノとして生を受けたベルフェゴール。
彼を拒絶し疎んじたのは、彼を生んだ筈の母親だった。

『俺を最初に悪魔って呼んだの、誰だか知ってる?』

いつかのベルフェゴールの声が耳に蘇る。

『母親だよ』

そう言って誤魔化すように乾いた笑い声を響かせていた。
そんなベルフェゴールを見て、スクアーロは胸が締め付けられたのを覚えている。
スクアーロはそっとベルフェゴールの前髪を避けた。
普段は前髪に隠れて見えないベルフェゴールの素顔が露になる。
眠っているためか幾分幼く見える。
あどけない寝顔は天使のようだ、とスクアーロは無意識に柄にもないことを思う。
「・・・・・・ん・・・」
不意にベルフェゴールが小さくみじろぐ。
起こしてしまったかと慌てるスクアーロ。
しかしベルフェゴールはスヤスヤと眠り続けている。
それを確認したスクアーロはほっと息をついた。



Fin.
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