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□10年後にいってらっしゃい
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(アンティーク)
「ゆ……悠弥?」
サロンに居たのは黒スーツを着た金髪の悠弥だった。ただし、翠の知る悠弥とは違う、成長した大人の悠弥だった。
「翠?…にしてはずい分幼いね」
大人悠弥はそう言いながら、サロンをぐるりと見回す。
「ここ……並盛のアジト?」
「ああ、そうだけど」
大人悠弥の質問に翠が答えると、ここは10年前かと呟きながら大人悠弥はゆっくりと立ち上がった。
その高さを見て、翠は顔を歪ませる。
「どうしたの、翠?」
「デケェな」
翠は大人悠弥を見上げながら言った。今の悠弥も十分大きいのだが、大人悠弥はそれ以上に大きい。
「そう?大人になった翠はこれぐらいだよ」
そう言って大人悠弥は自分の手で翠の身長を示す。それは今の翠の理想とどれくらい差があるかわからないが、翠は大人の自分の成長に素直に感嘆の声を上げた。
「うおっ!すげぇ」
「ははっ。10年前の翠は可愛いね」
はしゃぐ翠に大人悠弥は笑顔を浮かべる。
しかし、可愛いが禁句の翠は怒りを浮かべる。
「可愛いゆーなっ!」
翠が言うと、大人悠弥は笑いながら、自分を叩こうとする翠の両手を掴む。
「Scuza,mia giada.(ごめんね、僕の翡翠)」
大人悠弥はそうささやくと、翠の額に軽くキスをした。

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