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□Dolore
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『彼の者の魂が主の下で安らぎを得んことを』
司祭の祈りを終えると、皆が胸元で十字を切る。それから柩に親しい人から順に花を添えていく。
僕が花を添えると、肩にいたリジーも翠の死をわかっているのか、寂しそうに小さく鳴いた。リジーの頭を軽く撫でると、僕は葬儀の列をそっと離れた。
その時、翠の両親である山本夫妻が目に入った。涙を流す隼人さんに付き添っていた武さんが離れていく僕を見て何か言いた気に口を開いたが、僕は軽く頭を下げてそこから逃げ出した。
誰かが追い掛けてくるな、と思ったら千冬が追い掛けてきた。その後ろでは、凛音が少し遅れて続く。
「悠弥」
「しばらくリジー預かってくれる?」
どうして?と言うように、千冬が飴色の目でじっと見てくる。
「しばらくリジーの世話が出来そうにないんだ。だから……」
「わかった」
千冬が頷くと、リジーが名残惜しそうにしながらも僕から離れ、千冬の肩に移る。
「悠弥」
凛音に呼ばれたので顔を向けると、凛音の悲しそうな顔が目に入った。
「例の件、翠の両親には?」
「伝えました。とても、残念な結果だと言っていました」
「……そう」
僕はそう答えると、2人からも離れて駐車場に向かった。


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