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□Dolore
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自分の車に乗り込むと、ハンドルに額を預ける。
青いスポーツカー。翠と共有の車だけど、翠は運転がヘタだからいつも僕が運転していた。
静かな車内に僕の嗚咽と鼻をすする音が響いていた。
今日の葬式は翠だけの葬式だけじゃない。柩は1つだけだが、翠の柩の中には小さな桐の箱が入っている。それが2つ目の柩。中に横たわるのは、生まれる前に死んでしまった僕と翠の子。
翠は妊娠していたのだ。
ちゃんと人の形をした、ピーナッツほどの大きさの胎児を思い出すと涙が更に溢れてきた。
僕はどうして翠が死んだかはわからない。
凛音から知らせを受けて駆け付けた時には、もうエンバーミングが施されて冷たくなっていた。
どうして翠が死んだか誰に聞いても教えてもらえなかった。否、むしろ皆も知らないと言っていた。本当か嘘かはわからないけれど。
僕に残されたのは、答えのない何故?と翠と生まれてこれなかった子供を守れなかったという自己嫌悪だ。

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