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□Dolore
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凛音と並んで車に戻る。革靴で踏みしめる砂の感覚が気持ち悪い。
「ねぇ、凛音」
「何ですか?」
「翠の死因が何だったの?」
僕は知らない。翠がどうして死んだのか。
でも、僕は知っている。凛音が超直感で何かを知ったと。
「死因はまだ調査中ですが……僕が思うに、翠は…」
「翠は…?」
「翠は部下に殺されました」
そんな…ウソだろ?
「翠の部下の中にスパイが居たのです。翠は彼と相打ちになって死んだと思っています…」
「…信じられない」
僕は凛音から離れると、ポケットから車のキーを取り出しロックを解除した。
「悠弥!」
強い風に混じって凛音が僕の名を叫んだ。
「1人で居て悲しくなったら、誰でもいい!僕でも千冬でも、守護者の誰かでもいいから電話してください。1人で抱え込むより、誰かと話をしてください!」
僕は了解を答える代わりに、手を挙げた。

再び車を運転してやってきたのは、キャバッローネが所有する古い別荘だ。
前に翠と何度か来たことがある。
この別荘のスゴイ所は、リビングの天窓から見える星空だ。
僕は毛布をかき集めると、リビングでも毛布に包まる。寝転がれば、満点の星空が自然と目に入る。
突然、鼻歌が歌いたくなった。何も思い浮かばなかったから、翠と何度も連弾したエルガーの愛の挨拶。
翠は少しでも僕のヴァイオリンの音がずれると、不協和音だと言って怒ったっけ。

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