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□不良
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不意に背中に悪寒を感じて振り返った。
そこにいたのは殺気を放ちながらトンファーを構える悠弥だった。
悠弥は無言のまま男たちの懐に飛び込むと、相手が反応する間も与えずにトンファーで全員殴り倒してしまった。
全員気絶したのを確認し、悠弥は急いで翠の元へ駆け寄った。
なかなか学校に来ない翠を心配して捜しに来てみれば、いかにも柄の悪そうな男たちと血だらけで倒れる翠の姿。
一目で何が起こっていたのかを悟り、悠弥の中で何かがキレた。
怒りに任せて男たちを倒し、倒れている翠を抱き起こす。
「翠!翠!?しっかり!」
必死に呼び掛けながら、悠弥は翠の傷の酷さに驚いていた。
散々暴行を受けたのだろう、体中痣だらけで額や腕からは流血さえしている。
流血しているのに翠自身が大人しいのはパニックの限界点を越えてしまっているためだろう。
腕にあるのは火傷の痕か。
「翠!翠!」
何度も呼び掛けているとふと翠が顔を悠弥に向けた。
翠が気が付いたことに安堵しながら悠弥は翠に話しかける。
「翠、良かった。大丈・・・」
「・・・・・・ア・・・・レッ・・・シオ・・・・・・・」
「・・・・・え」
言葉を言いかけた悠弥に向かって、翠が虚ろな声で呟いた。
翠の口から溢れたありえない単語に悠弥は固まったまま動けない。
翠が彼を覚えている訳はないのだ。
あの事件を境に、翠は事件のことも彼のことも総て忘れてしまったのだから。
「・・・・あ・・・き・・・・?」
気を失ってしまった翠を抱き寄せ、悠弥は呆然と呟いた。

「・・・・・思い・・・出したの?」



Fin.
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