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□アニリボに瓜登場記念小説
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「翠、帰ったぜ」
夕方、夕食の支度のため妻より一足先に帰った武を出迎えたのは、愛息子のではなく、妻が息子の護衛として置いて行った瓜である。
「ただいま、瓜。翠の護衛ありがとな」
そう言って武が瓜のあごの下を撫でてやると、瓜は気持ちよさそうに目を細めた。
「翠?」
息子の姿を求めてリビングに向かうと、翠はまだ眠りの世界から目覚めてはいなかった。
しかしその姿を見て武の心臓は跳ね上がった。
暑いので翠が着ているのはTシャツと短パン。
つまり翠の白くて細い足が惜しげなく晒されているのだ。
愛する妻と同じ、触った途端折れてしまいそうな若鹿の足を見て、武の理性が僅かに崩壊した。
「んっ……」
翠の足に目を奪われていると、翠が呻き声を上げながら寝返りを打った。
一瞬、目を覚ましたのかと武は驚いたが、静かな寝息がそれを否定した。
しかし、寝返りをうったことで翠のTシャツが捲れ、武の鼓動がさらに早まった。
Tシャツが捲れた事により、余分な脂肪も引き締まった筋肉も無い翠の白い腹部が見えるようになったのだ。
以前、息子に欲情してしまった事のある武がそれを見て再び欲情しないはずが無かった。
理性が警告の鐘を鳴らしてもお構いなしに、武は息子の隣に腰を下ろした。
そして、ごくりとのどを鳴らし、息子に触れようと手を伸ばした。
「しゃあっっ!」
しかし、瓜の威嚇するような声の後、武は思いっきり腕を噛まれた。
「…ってぇ!離してくれよ、瓜」
しかし、護衛として本来の役目を果たしている瓜は、勝ち誇ったような顔をして離す気配は一向にない。
「瓜、頼むからさ〜」
「ん…なぁんだよ、瓜……うるせぇな。どうしたんだよ」
瓜の声に目を覚ました翠は、欠伸をするとのろのろと起き上がった。
「ただいま、翠」
「ああ……おかえり」
翠はそう言うと、瓜を武の腕から引き離した。
「父さんが帰ってきたってことは……もう夕方?」
「そうだぜ。もう5時半だ」
蚊が入ってくるから閉めるな、と言って立ち上がった武は窓を閉めた。
そして自分の息子に手を出そうとしていた自分を激しく責め立てた。
「腹減った…夕飯は?」
「今日は冷やし中華な。暑いからいいだろ?」
武は床に置きっぱなしのスーパーの袋を取ると、台所に向かった。
「母さんは?」
翠はまだ眠たそうな顔をしながら、テレビをつけてニュースをやっているチャンネルにする。
「隼人なら7時前には帰ってくるって」
「そっか……瓜のメシどーしよー」
翠の指も先程の武と同じように、瓜のあごの下を撫でてやる。瓜は幸せそうに目を細めた。
「翠がやってみるか?」
「いいのか?」
翠は瓜を抱きかかえながら父親に顔を向けた。
ボンゴレリングほど高精度のものではないが、翠は嵐のリングを持っており、炎を灯す事もできるようになった。
「いい機会だからやってみろよ」
「うん。そーする」
翠は瓜をソファーに下ろすと、リングを取り自分の部屋に向かった。
「瓜、さっきの事、隼人には内緒な。また隼人にお預けにされちまう」
武がそう言うと、瓜は知らないよと言うように小さく鳴いた。
「容赦ねーのな」
武は苦笑を浮かべた。

fin.
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