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□拍手ログ agosto
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夏といえば? その3 打ち水

「ひしゃくと手桶を持った和服の少年……様になってますね」
「………何が言いたい」
凛音の言葉に悠弥は低い声で反論した。
「悠弥は和服が似合うという事です」
「それは髪を黒く染めていたらの話」
ひしゃくから水が飛び出し、石畳に広がる。
夏休みに入ると、悠弥は染めていた髪を元の金髪に戻した。
アジア系の容姿はしていても、金髪鳶色の目で浴衣を着ると悠弥はどうも違和感を感じるのだ。
「イタリアでも打ち水はやってるらしいね」
「バジルさんがおじい様に影響されてやってるんでしょう。向こうも暑いのでしょう?」
「日差しは強いけど、日本ほど湿度は高くないよ」
桶の水がなくなると悠弥はひしゃくのその中に入れて、木製の階段に座っている凛音の隣に腰を下ろす。
「そろそろ千冬と翠を起こすべきですかね」
凛音はちらりと道場の方に振り返った。
山本家の道場にある畳の上で、浴衣姿の翠と千冬が並んで昼寝をしているのだ。
「だろうね。そろそろ武さんが夕食ができたって呼びに来るだろうし」
悠弥は草履を脱いで道場に上がった。
「君も結構似合ってると思うよ、浴衣」
「そうですか?」
凛音は動きづらいですと言いながら、袖をまくった。
「次にこういう機会があれば、2人には女物の浴衣を着て欲しいですね」
「いいね、それ。用意しとくよ」
悠弥と凛音はニッコリと笑みを浮かべた。
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