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□夏休み明けの災難
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「はじめまして、雲雀悠弥の父、ディーノです」
「担任の桜田です。今日はお呼びたてして申し訳ありませんでした」
ディーノが日本人の親とそう変わらない挨拶をすると、そばに控えていたロマーリオが皆さんでどうぞと言ってイタリアから持ってきたお菓子を桜田に渡した。
「ディーノさん、いつ日本に来たんだ?」
「僕と母さんがこっち帰ってくる時、ついてきた」
翠の質問に答えると、悠弥はロマーリオに顔を向ける。
「仕事あるからイタリアに帰ったほうがいいんじゃない?」
「ボスが若のパスタ食べるまで帰らないって聞かないんだ。仕方ないだろ」
ロマーリオの言葉に、悠弥は大きくため息をついた。
ディーノがそう言うのであれば、昼食はパスタを作らなければならないのだろうが、帰宅する時間を考えれば昼食には遅い時間だろうし、イタリアンを用意したら和食が好きな雲雀が機嫌を損ねるかもしれない。
どうすればいいのだろうと悩んでいる間に、両親たちは鳥居と共に隣室の生徒指導室に入っていった。
「桜田先生、そのいただいたお菓子食べちゃいましょうか」
「そうですね」
花山と桜田は子供のように笑顔を浮かべて紙袋から箱を取り出す。その箱にかかったパッケージを見て翠があっ!と叫んだ。
「先生、それめちゃめちゃ旨い菓子だよ。イタリアですげぇ有名なんだ」
「そうか。それは楽しみだ」
花山は頷くと、お茶でもいれようかねと言った。
「じゃあ僕が…」
いれましょうと悠弥が言う前に、雲雀の供でロマーリオと共についてきた草壁が手で制した。
「私が入れてきます。若は座っていてください」
「あ…うん」
悠弥が頷くと、草壁はしきりの向こうにある給湯室に向かった。
洋菓子にはちょっと合わない日本茶は草壁がすぐに持ってきた。
「ありがと」
桜田はお盆の上から湯のみを適当に配る。
「どうぞ、花先生」
「うん、ありがとう。草壁君も座りなさい」
「はい」
お菓子を頬張った翠は、なぁと皆に話し掛けた。
「草壁さんは花さんや桜田さんと知り合いなわけ?」
そうです、と草壁は頷いた。
「花先生は私が中1の時の社会科の先生。桜田先輩は………当時、中3にしてレディースの総長でした」
「えっ!?」
悠弥と翠は同時に桜田と花山を見た。
桜田は若気の至りよ、若気の至りと言って笑った。
その隣で花山はかつての教え子とこうして一緒に働けるとは思いもしなかったがね、とやはり笑っていた。
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