パラレル

□最幸の終わり方
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小さな声で鼻歌を歌いながらシャルはバルコニーに出た。
闇には星が瞬き、満点の星空が広がっていた。
「キレイ・・・今日は流れ星があるって本当なんだ」
シャルは小さな声で呟きながら目を輝かせるが、寒さに震えてストールで身をさらに包んだ。
その時、シャルの耳に足音が聞こえた。
誰かが屋根から手摺りに下りてきたような、そんな音だ。
なんだろうと思いながらシャルはその音のする方へ向かった。
屋根からバルコニーの影におりたシルヴィアは人が居ないか確認してから標的がいると思われる部屋を探した。
「・・・・・誰?」
その声にシルヴィアははっとした。
人が居るとは思わなかったからだ。
目撃者と協力者は殺す。
その教えに従い、シルヴィアはナイフを手にした。
相手は黒い髪と青い瞳の子供だった。
標的だと判断したシルヴィアがナイフを構えると、標的は逃げる所か何か悟った目でシルヴィアを見ていた。
その目にシルヴィアは手を止めた。
ナイフは子供の羽織っているストールを裂いて床に転がった。
「・・・・なぜ逃げない」
「あなた、暗殺者でしょ?」
子供はそっと笑った。
「待ってたよ。シャルを殺しにきてくれる暗殺者さん」
その笑顔になぜかシルヴィアは恐怖を感じた。
「さぁ、シャルを殺して。そのナイフで心臓を一突きに」
子供は目を閉じた。
シルヴィアはナイフを構えたが、急に考えが変わりため息をつくとナイフを下ろした。
何も起きない事に不審に思ったのか、子供が目を開けた。
「あなた、シャルの事殺しに来たんじゃないの?」
「ああ、そうだ」
シルヴィアは子供の瞳に惑わされている気分になった。
「でも気が変わった」
だからこうする事を決めたのだと思う事にした。
シルヴィアはナイフをしまうと、子供を軽々と抱き上げた。
「ちょっと痛いけど我慢してね」
シルヴィアは子供の寝巻を捲ると、腕に軽く傷を付けて血を流した。
血はバルコニーの床と切り裂かれたストールを汚し染みを作った。
シルヴィアは腕の傷口を縛ると、子供の髪を撫でた。
「俺に黙って連れ去られて」
子供は戸惑いながら頷いた。
「一生大切にするから、シャル」
それが恋だと気付かずにシルヴィアはシャルを連れ去った。

Fin.

前のケータイからサルベージしたもの
故に短い


お題配布先:私のセカイのただし方
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