頂き物
□彼氏彼女の事情
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「彼氏彼女の事情」
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「ミツバー」
いつものように、何気なくその名前を呼ぶ。
だけど、いつもと違う。
返事が中々来ない。
「ミツバー」
2回呼べば、流石に「聞き取れませんでした」は無いだろ。
でも、返事はまだ来ない。
いないのか?
…探すか。
探すまでも無かった。
までも、っつーか何つーか、
ミツバは外にいた。
厳密に言うと、ミツバは、白髪の天然パーマの男と外にいた。
「ミツバ」
「あ、十四郎さん」
「アーラ、土方くーん?」
「…何でテメエがいるんだ」
「ドラえもんにどこでもドア出してもらって、何にも考えないでドアくぐったらここに来た」
「ドラえもんなんかいねーよ」
「…そ、そうなんですか、十四郎さん」
「……何、信じてたのかよ」
「で、あんなニコチンは放っといて、さっきの続きなんだけど……」
万事屋は、お構い無しにミツバと話を続けた。
チキショー、俺が見えねえのかよォォォオ!!
俺は半ば、っつーか全体的にイライラしながら、そのへんの外壁に寄っかかって、煙草をふかした。
あー、もー、イライラするアイツ。
いつかシメるわー、マジねえって、人の女に手ェ出すとか…
…ん?待てよ、
万事屋アイツ、ミツバに何にもしてねえだろーなァ?
…してねえよな?ウン、そーだよ、してねえしてねえ。
というか、ミツバが乗るワケねえよ。ウン。絶対ねえよな!!
ミツバと万事屋は、相変わらず同じ笑顔で喋り続けてる。
何かもう、それだって嫌だ。
ミツバが、他の男と喋ってるだけでも、
他の男と目を合わせてるだけでも嫉妬しちまう。
俺おかしーな。
イライラを、紫煙と共に吐き出した。
…もう、駄目だ。
いや、別に束縛じゃなくてよ。
「万事屋」
「何?」
「どけ」
「何で?」
「いいから」
ミツバの隣に腰を下ろす万事屋を無理矢理どかして、
その場所よりもう少し近い場所に、今度は俺が腰を下ろす。
「どうしたの?大串君」
「大串じゃねえ」
「で、名前は置いといて、…どうしたの?」
「ここは俺の席だ」
「へーえ」
「で、ミツバは…」
俺たちのやりとりをニコニコしながら見ていたミツバを、
急に、自分の肩に引き寄せる。
「十四郎さん?」
「ミツバは、俺の女だから」
「ハイハイ、分かってますよ土方ジェラシ郎さん」
「何だよジェラシ郎って」
ミツバは目を丸くして驚いていたけれど、また笑った。
万事屋が俺たちを見てニヤニヤしてたけど、俺はその肩を離さなかった。