土ミツ連載
□万能メイドミツバさん(6)
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「ミーツバ殿♪」
昼休みも終わりつつある食堂でせっせと片付けをしていたミツバに声をかけたのは、真撰組を率いる局長である近藤。
働く手を止めたミツバは、彼にニコリと微笑んだ。
「あら、近藤さん!どうかなさったんですか?」
ミツバが不思議そうに尋ねると、近藤はニコニコと笑顔で封筒を渡した。
その薄い茶色の封筒には若干の厚さがある。中を覗いてみると、そこに入っているのはどうやらお札のようだ。
「近藤さん…これは…?」
「ミツバ殿にはいつもお世話になっているからな、これでお召し物でも買って下さい」
笑顔の近藤とは反対に、ミツバは困ったような申し訳ない顔をした。
頓所で総悟や近藤達とこうやって一緒にいれるだけでも有難いのに、お金を貰うだなんて贅沢だと思っていた。
「近藤さん……私はみんなと一緒に居れるだけでも十分よ。だから、こんなに貰えないわ…」
ミツバが封筒を近藤に返そうとすると、近藤はその手を止めるように優しく手を握った。
「俺達こそミツバ殿にはよくしてもらって…
だから、ミツバ殿にせめてお洒落ぐらいさせてあげたいんです!
これは真撰組みんなの意見で決まったことだから、ミツバ殿に受け取ってもらわなきゃ、俺…みんなに怒られちゃう;」
そう言って近藤は後頭部をガシガシとかきながら、ミツバに笑顔を向けた。
「……ッ、近藤さんには敵わないな…
じゃあ、皆さんからのお気持ち…有り難く頂きます!」
「よかった〜…!ミツバ殿に受け取って貰えなかったら、俺トシに…」
近藤は途中まで言いかけて、慌てて口を塞いだ。
そういえばミツバ殿はトシのことは知らねぇハズだよな……?
こんなこと知られたら、総悟がしばらく俺と口聞いてくれなくなっちゃうよ〜;
「…?
十四郎さんがどうかなさったの?」
一人悶々としていた近藤の耳に入った言葉は自分の予想とは違うもの。
アレ?と、近藤は目を丸くしながらミツバの顔を見つめた。
「ミツバ殿……トシのこと知ってんの??」
「勿論よ。この前一緒にお話したもの」
パァァァァァァ!!!!!
今までハテナマークを顔に浮かべていた近藤だが、一変して瞳をキラキラと輝かせている。
「なんだなんだ!俺ってばとんだ早とちりしてたんだな〜
あ、そうだ!
どうせなら明日はトシと街にでも行ってみてはどうですか?
確かあいつ明日は非番ですし♪」
いわゆるデートというものをさせたい近藤。
若き日の二人は二人きりでデートなんてしたこともない。
昔叶わなかったことを二人の友人であり、恋の応援団長の近藤はどうしても実現させてあげたいのだ。
しかしミツバは下を向いて、近藤の提案に乗り気ではないよう。
不思議に思った近藤は、ミツバの顔を覗き込んだ。
「でも、私…」
「ミツバ殿…トシもきっと楽しんでくれますよ」
「で、でも……着物だって普段着用しかないから、十四朗さんの隣を歩くのは…」
「な〜んだ!それなら俺に任せて下さい♪
とにかくミツバ殿は明日、トシと一緒に江戸でも見物してきてください!」
約束ですよ〜!と叫びながら、近藤は笑顔でミツバの元を走り去って行った。
ミツバも彼にはにかみながら手を振った。
――――――――――
「ト〜シ〜!!!」
自室で煙草の煙を堪能しながら書類に目を通していた土方は、近藤のいきなりの訪問に驚き、ビクリと肩を跳ね上げた。
「な、なんだいきなり!?
どうかしたのか近藤さん!!?」
「お前明日非番だよな?」
「ん……?あぁ、そうだけど…」
眉を潜める土方を他所に、近藤は気持ち悪いぐらいの笑顔で土方の両肩を掴んだ。
「じゃあ明日はミツバ殿とデートな♪」
「あぁそう、ミツバとデートね
って、エェェェェェェ!!?
デートって、アンタ!!?/////」
「じゃあ明日10時なvv」
「って、おい勝手にっ…!」
土方の答えも聞かず、近藤はまた何処かへ去って行った。