“Re;”
□僕らが願った世界は、こんなものじゃなかったのに
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派手な音がして、目の前の文明の回復の証とも言えたビル群の一角が崩れ落ちる。
構うものかと通り過ぎ様とした其処に、其処に在ったものに背筋が粟立った
(なんで…っ)
やりきれない思いが込められた刃を振り下ろした
皇暦2021年9月28日
合衆国EUより超合衆国脱退声明、欧州連合国と名を改める
それと時を同じくして超合衆国並びに黒の騎士団へと戦線布告
合衆国中華へと侵攻を開始
国境沿いの小さな山村ばかりの其処は、落ちるのは容易かった
しかし、中華には幸か不幸か天子さま付きの1人であり元ブリタニア帝国ナイトオブラウンズが3卓、ジノ・ヴァインベルグが居た。
この青年の活躍により、一時は侵攻を食い止めたものの、それが物議となる
彼は天子の付き人であって、今は軍人ではない。
軍人とは、騎士団を指し
超合衆国はそれ以外の武力を持つことは禁止されている
つまり、騎士団以外の武力を武力ではねのける行為ですら国際条例に違反するのだ
ジノ・ヴァインベルグは騎士団により身柄を拘束される事となった。
しかし、騎士団にも問題が有ったのだ
騎士団の嘗てのエースパイロット紅月カレン、総司令星刻の不在である。
前者は学生に戻り、後者は療養中である
そして星刻総司令官の事は周知の事実なれど
紅月カレンの事を、現CEO……元黒の騎士団副司令であり現合衆国日本首相、扇要氏は公表してはいなかった
それは民主の不安を煽る
また、過去の出来事を掘り起こす。
「ですから、彼がCEOになるのは反対だと申したのです!あの方が心血を注いで作ったこの平和をお忘れか!」
「皇最高議長、落ち着いて下さい!」
「これが落ち着いてなどおられますか!兎に角、至急ブリタニアに連絡を。ゼロをお呼び下さいませ。宜しいですね!」
世界は揺らぐ。
旧時代の象徴、唯一皇帝ルルーシュ亡き後
英雄ゼロを再びCEOに、との声を辞退しブリタニアへと渡った
その後任として、元黒の騎士団副司令である扇要に白羽の矢があたる
この事に関しては超合衆国、皇神楽耶最高議会議長のみの異論となり信任投票を経ての就任となる。
『超合集国決議第拾弐號は賛成多数により、可決されました』
世界は揺れる。
欧州連合国の行為を侵略、略奪とみなし
徹底抗戦の構えを取る
それは、彼にも彼女達にも直ぐに伝えられた
「…何なの、其れ」
『…………言葉の通りだよ、元黒の騎士団エースパイロットの紅月カレン』
「なら、何の為に私は…私達は彼を殺したの!扇さん!」
『だ、だが、あの頃に比べたら情勢は…』
「今は良くても、其れが続くとは限らないじゃない!其れが明日よ!彼がくれた大切なもの」
『その為に、こうやって、敵を…』
「……申し訳ありませんが、扇首相。私のあの人の為の剣はもう既に折りました。今の私は、あなたの為には戦えません」
『ちょ、待て、カレ…ブツッ
「私は、あなたを殺してしまった事が今でも怖いのよ。ねぇ、ルルーシュ、私達は」
「お兄様、また戦争が始まります。あなたのくれた世界をとうとう汚す日が来てしまいました。…いえ、最初から世界は綺麗ではありませんでしたね。何故私達は争う事しか出来ないのでしょうか。お兄様、私達が…。………ゼロ」
「何でしょうか、ナナリー様」
「黒の騎士団へ、」
「承知致しました」
『たった今入りました臨時のニュースです。超合衆国決議第拾弐號が可決されたとの事です。これにより、黒の騎士団と欧州連合国は全面的な戦争と成る模様です。現在の戦闘予測地及び避難地域は以下の通りとなっております。繰り返します……』
「何でなんだよ、何でなんだよ。こんなの」
画面に映る愛しい人の顔は青ざめている
無理もない。
だって、この世界への代償は自分達にとって本当に大切だった。
更に過去の真実を知ってしまった以上、
「何で、お前が犠牲になったのに。それだけじゃ足りなかったのかよ。なぁ、ルルーシュ。俺達が...」
崩れたビル群に
所々赤黒い染みが滲んでいる。
敵機の残骸と、剥き出しの鉄骨、折れた木々
瓦礫の影には小さな身体。
その周囲に飛び散る色に、それは既に事切れていると判断に容易い
漆黒に塗られた愛機を降りて近づく
10歳くらいだろうか、少年の亡骸だった。
(あぁ、)
そっとその冷たい身体に触れた瞬間、目の奥が痛んだが
無視をして抱え上げた
見上げる空はあの日と違って暗雲に満ちている。
(ねぇ、ルルーシュ、僕らの)
「僕らが願った世界はこんなものじゃなかったのに!」
*****
それでも僕らには
明日へと進む事しか出来ないんだ
(行き先は選べずとも)
リレー小説始めました。by 琉枷