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□やきもちきもち。
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多分、あいつはあそこにいる。


そう願いながら、その場所を目指す。


階段を上り、上り

たどり着いた場所。


勢いよく扉を開ける。






「っはあ…おった…岳…人…っ」


「っ!…侑士…」



心地よい風が汗でベタつく体を通り抜け、ひんやりと冷たい。


岳人は、いつもの場所に体育座りで座っていた。




「岳人…何拗ねてんねん…」



ゆっくりと近づくが、岳人はその場から逃げない。



「…拗ねてなんかねーし。」



頬を膨らまし、顔を太ももに埋め、隠す。




「…すまんな」




もしかして、これはヤキモチを妬いてくれてるのだろうか。




「俺が好きなんわ、岳人だけやで?
…せや、今日はワガママ聞いたる。何でも言ってくれて構わへんで?」


ワインレッドのサラサラとした髪を撫でる。










「じゃあ……おんぶして。」






小さな声だが、可愛いお願いはしっかりと耳に届いた。



「…了解。…さあどうぞ。」



軽いからすっとおぶれる。
彼の体温が背中から伝わってくる。



「…これでええか?」



「……ん。」


すりすり、と顔をこすりつけながら
小さく頷いたのが分かった。



「…他にもしてほしいことあるか?」


今日は、たくさんワガママを聞いてあげよう。






「じゃあ…ぎゅってして?」




「…了解。」




甘くて可愛いお願いは続く。



「…これでええか?」


背中から下ろし、細い体を抱きしめる。


「…侑士、汗くさい。」
クスクスと笑う



「しゃーないやろ!走ってきたんやから…」



「ん、ありがとな。」


ぽんぽん、と背中を叩かれた




「他にもあるか?」


抱きしめたまま、次のお願いを聞く。





「じゃあ…しゃがんで?」


次のお願いは意外なものだった。

「あ、ああ?」


ワケが分からないまま手を離し、その場にしゃがむ。




「よし。」




眼鏡を外され、頬に岳人の手が置かれる




「…岳…」



「だまれ。」





「……っ!」






唇が重なった






突然のことに目は開いたまま




「んっ…」



数秒経ち、キスだと分かると手を伸ばし、岳人の頭を引き寄せる。


「んんっ…」



こちらからキスをすることはあっても、される事は今までなかった。


「っ……」


舌が侵入してきた。


その流れに身を任せてみる







くちゅっ、と音を立てながら絡まる舌同士。


微量の電流のようなものが
体に走り刺激する。



顔の角度を変えながら

一生懸命キスをしてくる岳人が



本当に愛おしい。





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