3 chocolat

□candy
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時刻は11時50分。
時計を見上げて私は呟いた。

「ミサさん、今日私の誕生日なんですよ」

「あ、そうなの?」

隣に座る弥はそれを聞いても興味無さげに雑誌を捲る手を止めない。

まあ、別に何かしてもらいたい訳でもないが。

10月31日。それはハロウィンという祭がある日であり、また、私の誕生日でもある。

捜査で忙しいこの時に、誕生日などを祝う暇などない。が、誰かに、誕生日、おめでとう、くらい言ってほしかった。

あと10分で11月に変わる。…訂正する。あと9分だ。



目の前のコーヒーカップに角砂糖を投げ入れ、すする。

苦い。


砂糖が足りなかったか。

そんな事を思っていると、弥が突然口を開いた。


「じゃ、何かあげなきゃね。」

そう言ってずい、と目の前に差し出されたのは、

「…チュッパチャップス…」

「うん、昨日ロケでもらったんだけど、ミサこの味嫌いだから、あげるね」

そう言って弥はまた雑誌に視線を戻した。

…喜んでいいのか…

都合良く処理された手元の飴を見やる。

包みを開いて、口に含むと、広がる苺の味。

甘い。

苦味が口から消えていく。

「…ありがとうございます」

「どーいたしまして」

相変わらず目は雑誌に捕われたまま、弥は手をひらひらとさせて答えた。


カチ、と時計が鳴る。

針は12時を指していた。

私の誕生日が終わった。

…唯一誕生日を祝ってもらったのが、私が追っている犯人とは。

いや、祝ってもらったのかどうかは解らないが。


…まぁ、いいか。


口の中に広がる甘さを味わうように、私は目を閉じた。




HAPPY BIRTH DAY! L!

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