注意*微ERO、微暴力 暗いです。 ――――――――― 愛情過食症 押し付けられた床は冷たくて、鳥肌が立った。 金の髪が散らばる。ずきずきと痛む背中と、私に跨り押さえ付けている男の爪が肩に食い込んで血が滲む。 先程までアイスクリームを掬っていたスプーンは今はその先を翠の瞳に向けて、滑らかなバニラのように掬う準備をしていた。 銀色に歪んで鈍く光るそれを至近距離で見つめて、頭の上の、スプーンを手に持って笑う男に目を向けた。 「どうするつもり」 尋ねれば、歪んだ微笑みが注がれる。 赤い瞳がぐにゃりと三日月に揺れてそれはそれは楽しそうな声で答えた。 「どうするって、決まってるじゃない。えぐるんだよ。」 ゆっくりとスプーンが近付いてきた。私の瞳に触れるか触れないかの所でピタリと止まる。 何故今こんな状況なのか――― 原因は私にもわからない。彼の部屋でいつものようにお菓子を食べながら談笑していただけなのに。 私はいきなり冷たい床に押し倒され、眼を刳り貫かれようとしている。 「えぐってどうするの。」 「知らない。ただ、欲しいだけ。」 「翠の瞳、綺麗な翠の瞳。何が映るのか、何を映すのか、知りたいんだ。」 右手のスプーンを私の目に構えたまま、彼はわたしの肩を押さえ付ける左手を離して、頬に触れた。 指がするすると輪郭をなぞり、冷たい掌が頬を包んだ。親指で眼球の形を確かめるように、瞼をゆっくり撫でられる。 「嘘。嘘つき」 本当はそんな目的無いくせに。 欲しがる原因はわからないけれど、もっと別の理由があるんでしょう? そんな思いを込めて、男を見上げると、彼はヒヒヒ、と笑った。 上を向いて笑うものだから、今の私には彼の口しか見えない。 「うん、ごめん、嘘。鋭いね、ベルちゃん」 ケタケタ笑う彼の口は大きく、黒く、ブラックホールのように歪んでは、白い歯を覗かせる。 「えぐってしまえば、もう君は誰も見る事が無くなるでしょう?君の眼をもつ僕だけが、僕だけが、その瞳に映るでしょう?」 危うく光る紅い瞳がぐるりと下を向いて、私を見下ろした。 「だから、貰うね?」 同時に瞼を撫でていた指が鋭い爪を立てた。 「…っ」 血は出なかったけれど、突然の衝撃に驚き、ビクリと体が震えた。 「大丈夫。痛くないよ。すぐに痛み止の薬を持って来てあげるから。」 子どもをあやすように優しい声で囁かれる。 「…っ…どうしたの、スマイル。」 男の名前を呼んで、腕を伸ばして彼の青い髪に触れる。 少し堅い髪は、けれどとても指通りがよくて、さらさらと流れた。 「どうもシナイヨ?ただ、」 彼は身を屈めて私に顔を近付けた。 にぃ、と白いギザギザの歯が剥き出しになる。 「馬鹿な男共をその眼に映してその綺麗な瞳を汚すくらいなら、いっそ僕が頂いちゃおうと思っただけさ。」 赤い舌がヌルリと蛇のように現れ、同時に私の瞳を舐め上げられた。 生暖かく、柔らかい湿り気を帯びた肉が視界を全て奪う。 「…ッ!」 眼球に走る痛みに思わず瞼を閉じると、それを阻止するように舌でこじあけられる。 頭を振って回避しようとするも、至近距離に構えられたスプーンの存在と、私の頭を押さえ付ける腕のせいで叶わない。 「いや…っ!」 →next |