2周年フリリク

□薬指に幼い愛ひとつ
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「ルーク!ほら見て!」


またこの声。そろそろ疲れてきた足を止めて、振り返れば目の前に広がる鮮やかな色。
ふわっ、宙に舞うそれはゆっくり流れるように落ちていって、反射的に腕を伸ばすとその一つがひらりと手のひらに乗る。薄い紫色の、花びら。上から黄色くて少し大きめの花びらが重なった。
たくさんの花びらが舞う中で、彼女は無邪気に笑っていた。


「ど?びっくりした?」
「おまえ、これどうしたんだよ」
「さっきの街で買ったの!花!」


きらきら、太陽みたいに笑う彼女は本当に楽しそうで。何がそんなに嬉しいんだと聞きたくなるくらいはしゃいでいた。
俺の周りに散らばった花びらは色も形もばらばらで、土の道を綺麗に彩っている。
少し離れたところでティア達がこちらの様子を見て微笑んでいるのがわかった。それがなんだか気恥ずかしくて、不自然に彼女から目を逸した。


「・・・花、こんなにしたら可哀相じゃんか」
「あ、これね、造花なの」
「造花?」
「うん。凄いよね、本物じゃないのにすごくきれい」


言って、ポケットの中からもう一輪花を取り出すこいつ。多分、これも造花なのだろう。
こいつの言うことが、まるで自分が言われているみたいに思えた。本物じゃないのに、瓜二つ。
手の中の青い造花を見つめる視線が、こちらに向いた。先程はしゃいでいたのとは違って、優しく笑う顔はすごく穏やかだった。


「どうしたの?」
「え?」
「何か、寂しそうだった」


ふわりと、造花を持ったままの彼女の手が頭に触れた。指が髪の間に入り込む。
すぐに離されたその手にはあの青い花はなくて、あれ、と思っていると彼女がぷっと小さく噴き出した。
そこで初めて彼女の意図に気付いてすぐさま頭に手をやると、指に髪とは違った感触。
慌ててそれを外して見ると、予想した通りのものが自分の手に握られていた。


「可愛かったのに」
「嬉しくねーよ!」


クスクスと笑う彼女は、悪気などこれっぽっちもなかった。
まるで子供のお遊戯をしているような気分だ。
彼女からオレの手に渡ったそれは、小さめの鮮やかな青。
ルーク!遠くでアニスが呼んでいる声がした。背中を向けていたオレの代わりに彼女が返事をして、早く行こうと笑いながらオレの横を過ぎた。
一つ風が吹いて、地面に散らばった花びらが舞い上がった。


「なあ!」


思わず呼び止めると、彼女は足を止めてくるりと振り返った。
何?と首を傾げるそいつの無防備な手を掴んで、素早く造花をくくり付ける。
パッと離した左手の薬指に、しっかりと巻き付けられた青い花。突然の行動に呆然と自分の手を見つめる彼女に、お返しだ、と笑ってすぐ走り出した。熱くなる顔を隠す自信がなかった。
けれど彼女はすぐに追いかけてきて、ぎゅうと腕を掴んできた。ちらりと横目で見た頬は赤く染まっていて、二人で赤いなら別にいいかな、と自分のより一回り小さい手を握った。










薬指に幼い愛ひとつ
(口約束にもならない小さな想いだけれど、それが現実になる日をきみと共に生きる)



―――



また半端な婚約ネタ・・・。
久々のルーク夢でした。



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