2周年フリリク

□愛するより重要なこと
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ぺらり、雑誌のページがめくれる音。音を立てているのは隆也で、聞いているのは私。時計を見ればもう30分ほど、その状態のまま彼の雑誌を読む手を見つめていた。ベッドに俯せに寝そべる私は、そのベッドを背もたれにする彼の後ろ姿だけを見ていた。
まあ、そうやって彼を観察しているのもいいのだが、つまらないというか暇というか、つまりは少し寂しいと思っていたりもする。そうしている間も隆也は雑誌のページをまためくる。遊びたいとか話したいとか、こんな風に思うのは私だけなのだろうか。
ふいに、そんな彼の首筋に目が移る。ほんの2ヶ月ほど前より随分と伸びた黒髪。当然だが手入れも何もしていない髪は無造作に伸ばされ、首筋に触れそうなところまで長くなっていた。部活が忙しくて切りに行く暇もないのだろう。さらり、その髪に触れるとやっと隆也が反応を示した。


「なに」
「あ、髪触られるの嫌い?」
「いや、別に」


言うなり、隆也の視線は再び手元の雑誌へ。それをいいことに私の手は彼の髪に触れたまま。指で毛先を弄っていても彼はもう動じないらしい。こんな反応も、やっぱりつまらない。
ちょいちょいっと髪を弾いてみる。やっぱり反応なし。
・・・隆也。呟くと同時に私の頭が落ちた。隆也の首筋にぽすんと落ちて、腕は彼の身体の前でぎゅっと組む。後ろから抱き付く形になったけれど、彼からはさほど驚いた様子は伺えない。こいつはもっと私に興味を持つべきだと思った。


「隆也、さみしい」


結局折れるのはいつも私なんだ。隆也はずるい。私が寂しいと言った途端、今まで夢中だった雑誌を床に投げ捨てるのだから。
グイッと私の頭を引きはがす手は乱暴なのに、頬に降りてきた手は彼のものとは思えないくらいに優しかった。彼はいつも勝手で唐突で横暴だ。そして私は抵抗の術もなく、元より抵抗する気もなく、近付く瞳に瞼を落とした。





愛するより重要なこと
(触れること話すこと、何より必要で大切なこと)


―――


ちくしょう阿部難しい



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