□大事なものは目蓋の裏
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目蓋が重い。
仕方ないよね、私が油断したんだから。
あちこち傷だらけで、いっぱい血が出ているはずなのに痛みを感じないのは、痛すぎて感じられない?それとも神経が麻痺した?
あぁ、もうどちらでもいい。

今はちょうど夕方で、世界は赤く紅く朱く見えた。
私は赤が嫌で、重い目蓋を下ろす。
すると暗闇が訪れて。
そう言えばこういう状態の時目閉じちゃいけなかったっけ。
でも、もういいや。
ピピッピガッガッ
ゴーレムの音だ。

「おいっ!!」

うるさいノイズの後に聞こえたその声はもう聞き慣れた声で。

「・・・・・ユ・・・ウ?」
「お前今どこにいんだよ!?」

向こうから聞こえるその声に余裕はなくて、珍しく取り乱してるんだなぁと思った。

「探してよ」
「何、言ってんだ!」

なぜだか笑みがこぼれてくる。

こういうときってね、目を閉じたら一番大切な人が見えるんだって。
私がみたのは、

「ユウ」

ユウ、ユウ、ユウ。
私は空に手を伸ばした。
もう一度触れられたら。
そしたら、そこにふわりと温かいものが触れた。

「しっかりしろ!」

って怒鳴る声。
来てくれたんだ。
見つけてくれたんだ。
でももう時間はないよ。
だってあなたの声が、聞こえない。

「ねぇ・・・・ユウ」

私、あなたの大切になれてたかなぁ。
それは声にはならなくて。
ただただ。
あなたの暗闇に私がいたら嬉しいよ。





大事なものは目蓋の裏
(幸せに堕ちていく)






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そしてユウくん

大事なものは目蓋の裏/KOKIA

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