short

□闇のなか
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窓から月が差し込んでくる。
今は闇につつまれた、夜。



「う"…ぅぅっ」


僕の目から冷たいしずくが滴りおちる。



あのころから毎晩、夢をみる。

過去の出来事がフラッシュバックのように僕を追い詰める。のみこむように、そして浸食してゆくんだ。




「ふぅぅーっ」


大きく、息をはく。
ひくひくと嗚咽はとまらないけれど。

少し、落ち着くから。





「……ッ」
「おち…つかない。」



ふと目にはいった月が、あのときの月と似すぎていて…


再びのフラッシュバックが僕を襲う。


「紅茶を…のみたい。」




さすがのセバスチャンでも、こんな真夜中に呼ぶのはな…。

静かにベットから降りて、音を立てないように廊下をすすむ。



……行き先は、執事室。



ノックはせずに、そっとドアを開いた。



「…坊っちゃん、どうなさいました?」


セバスは、ベットにこしかけて本を開いていた。

ふりむきながら、やさしい笑顔でこちらをみるセバスチャン。



「眠…れ…ない。から紅…ッ」



涙で潤んだ瞳でセバスチャンに訴えかけた。


「そうですか………では、こちらへいらっしゃい?坊っちゃん」



コクンと頷いて、ベットの前まで足を進めた。

ベットをはさんで向こう側にセバスチャンがいる状態。


「こちらへどうぞ?」

「あぁ。」



僕は、セバスがめくってくれた布団の中にすべりこんだ。


同時に、セバスチャンも隣に寝そべった。




真横にあるため、月に照らされたセバスチャンの顔がよく見える。



「もう…月がこんなに高い。紅茶は、明日の朝に飲みましょうね?」

「わかった…。」



次の瞬間、僕はセバスチャンの腕のなかにいた。


ギュっと抱きしめられている。



ひとりでいるより…温かいからなのか、この状況にドキドキしてきるからなのか、わからないけれど、


僕の頬から涙の跡は消えて、赤くそまっていった。



こうしていると、恥ずかしい。

けど、セバスチャンにギュっとされている嬉しさと暖かさでいっぱいになって、


いつのまにか、僕はすやすやと眠りについてた。
















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