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□想う
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貴方が望むなら、赤黒く沈んだおぞましい恐怖から貴方を引き上げて差し上げましょう?
貴方がそうすることは決してないと思いますが。
盲目の世界に咲く一輪の花のように、闇を背負い生きて行く道を選んだのは貴方自身だから。
もろく細い足で立つ姿は、どんなに美しいことか…。
貴方はまだ気付かない。
…嗚呼。
貴方のその魂は少しばかり美し過ぎる。
貴方が繰り出すその魅力は、色々な人を惑わせる。
私も、その内の一部分に過ぎない。
ただ、ひとつ違うこと。
人は貴方の駒であり、それ以上でも以下でもなく…主に影響を与えることはできない。
しかし、私は貴方の魅力を引き出すことを許される。
指先が触れれば可愛いらしく頬をそめ、嫌味をいえば遠慮なく歯向かい…、
私はそれを楽しみ。
貴方もまた然り。
ただ、貴方は貪欲だ。
…それでは物足りないご様子で。
決して言葉にしようとしませんが、あるいは気付いてすらいないようですが、貴方の魂がそう叫んでいる。
もっと深い闇に引きずりこんでもよいですか?
溺れさせてもよいですか?
貴方が無意識に作り出した私への想いを、貴方の目の見えるところに置いてみましょうか。
貴方はどんな顔をするだろう…。
…クスッ
気付けば心の中まで、貴方で満たされている。
私としたことが…。
──黒い執事は、嘲笑ぎみに口角をあげた。
そして今日もまた、主の側で生活を楽しむ。
…最後のコールを聞く、その日まで永久に。