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□おやつの時間
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「坊っちゃん?つまみぐいとは…お行儀が悪いですね。」

黒い微笑みに、ぐっと生唾をのんむシエル。

少し顔を歪めた主の反応に、執事の口角はニヤリとあがる。


(あぁぁぁ…。またいつものように余計に勉強させられるのか…。)

面倒なことになった、そう思った瞬間に捕まれた右手首。


「……?」

シエルは目を丸くしてセバスチャンを見返す。

表情ひとつ変えずに近づいてくる執事に居たたまれなくなって声を発する。

「…おいっ!」

「紅茶も飲まずにお一人でこんなに食べて…、虫歯ができたらどうするおつもりですか?」


捕まれた手首と近づい執事の綺麗な顔に気を奪われていると、ため息混じりにそういわれた。

「別に僕の体なんだから、僕がどうしようとっ…んん!」

「ほら、しっかりとお口の中を見せて下さい?」


シエルの言葉は執事によって遮られてしまい。

あーんと開かれた口が無様に思えて、最大限に睨むが。

そんなことはお構い無しに、もう一方の手で口中をまさぐられる。


「虫歯は…ありませんね」
(…っ、だったら早く離さないかっ)


目線が合う高さで、眉をひそめた顔を見せつけられる。

「〜っ早く離せっ…!」

「御意。」


命令には逆らえないため、執事はやむおえず主から離れる。


「…これぐらいで、虫歯になどならないだろう…っ!」

不覚にも染まってしまった頬を精一杯否定するように、大声を発する。


「…ふふっ」

「っなにがおかしいっ?」

「なんでもありませんよ、気になさらないで下さい。」


心なしか気分の良い執事と、ふてくされる主。


昼下がりの暖かい空気に溶けた空間は、何気ない一瞬の幸福を見守っているかのようだった。
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