短編

□好きなら好きと言うのが常識!
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あいつは、俺が何処にいようが必ず見つける。




普段のギルドでも…。



『グレイ!』

『………』



家の中で寛いでいても…。



『グレイ!やっぱり居たな』

『……』




風呂でも…最悪の時はトイレの前でも。
俺を見つけては笑顔を向けて俺の名を呼んだ。
そして言うんだ…毎回。






『好きだ!』って…。










【好きなら好きと言うのが常識!】










「……」




グレイはギルドの出入り口を覗き、ギルド内を見る。
何回も見返し、桜色の頭が無いことを確認するとギルドへ入る。安心しながらカウンターへ向かう中、仲間と挨拶を交わす。カウンターにはミラジェーンが皿を拭いていた。




「おはよう、グレイ」

「ミラちゃん、おはよう」




カウンターのイスに座ると、いつもの。とミラジェーンに頼む。いつもの、とはココアの事である。グレイの一日はミラジェーンが淹れてくれるココアから始まるのだ。
コトリッと机の上にココアが入ったコップが置かれる。湯気が出ていて、ココアの良い匂いが鼻につく。コップを持ち、熱々じゃなくグレイの為にミラジェーンが飲みやすいように少し温めのココアを飲む。
一口飲んでフゥッと息を吐いた。




「グレイ、最近そわそわしてない?」

「え?…どこがだよ」

「ナツ、避けてるでしょ☆」

「ょ…よしてくれよ、朝っぱらからソイツの話なんて」

「アラアラ」




ミラジェーンの発言にグレイは首を強く横に振った。
断固拒否をしているようだが、頬が若干赤く染まっている。なにより耳が真っ赤だ。それでも必死に隠そうとするグレイが可愛く見えるミラジェーンはくすくす笑ったのだった。




ミラちゃん、たまに、こう…俺で遊ぶんだよなぁ。
避けずにいられねぇじゃねぇか。
「好き」とか毎回言われちゃ…誰でも避ける。
女ならまだしも俺は男だ。




「はあ…」

「よお!グレイ!!!」

「―…ぅあああっ!?」




溜め息を吐いた途端、目の前のカウンターからナツが出てきた。いつもそこに座るグレイの場所を把握していたナツはギルドに入ろうとするグレイを見つけて、カウンターに隠れていたのだ。
勿論、ミラジェーンは知っていたがグレイに黙っていたのだった。いきなり出てきたナツにグレイは肩をビクつかせ、そのまま後ろへ傾きイスから落っこちてしまったのだった。
ゴツンッと痛々しい音が響き、ナツがカウンターから覗き込むと後頭部を押さえ痛みを我慢するグレイがいた。




「〜〜っ。バカナツ何しやがる!」

「情けねぇなぁ…それぐらい受け身とれよ」

「てめぇのせいだろ!大体なんでそこにいんだよ!」

「……なりゆき?」

「…なんのだよ!?」




ナツの発言に頭を抱える。
ミラジェーンは二人が面白く、口元を緩めて笑ったのだった。賑やかギルドも好きだが、やはりギルドにはいつものように騒ぐ二人がいるほうがもっと賑やかになって好きだ。
てめぇ後で殴るからな。とグレイは未だ痛む頭を擦りながらもう一度イスに座る。ココアを口にしようとしたのだが、ナツがカウンターを飛び越えグレイの隣に座るとズイッとグレイに近付いた。




「なぁなぁ、グレイ!」

「……な、なんだよ。つか、顔近ぇよ」

「いつ返事くれんだよ?」

「…は?」

「だから、告白の返事だよ!」

「―…なっ!?」




賑やかだった回りが急に静かになる。
待ってました!と誰もが思っていた。ナツがグレイを好きなのはギルド全員が知っているのだ。仲間たちの目線がナツとグレイに向けられ、グレイにとっては気まずい雰囲気だ。
顔にフツフツと熱が集まるのが分かる。




「ば…おまっ……なに言って!」

「俺はグレイが好きなんだよ!その返事だっての。何なら何回も言ってやろうか?俺はグレイが好、」

「あぁああぁああぁあ!」

「なんだよ!!」

「なんだよ、じゃねぇだろ!?」




顔を林檎のように真っ赤に染め、ナツに怒鳴る。
冗談じゃない!っという思いで一杯であった。冷やかせれ、楽しまれちゃあ、向こうの思う壺。小さなクレームを起こす仲間たちだったが、グレイの一睨みで口を閉じ静まる。
グレイには分からなかった。ナツが何の為にこんな事を言うのか。仲間たちが何で楽しんでいるのか。普通は引くところだ。男のナツが男のグレイを好んでる自体そうなるはずだ。全く分からない。嫌がらせかなんかに違いない。とグレイは思ったのだった。




「……馬鹿にするのも大概にしろ!こんな事言って恥ずかしくねぇのかよ!それとも俺への嫌がらせか?」

「あのなぁ…俺は真実を言ってんだよ。好きな奴に好きって言う事の何が恥ずかしいんだよ」

「っ…!」




なんなんだよ、コイツ!
サラッと恥ずかしい事、言いやがって。
よりによって皆の前でっ。
恥ずかしい…っ。




ナツの手が頬に近づいてくるのに気付いたグレイは、振り払った。パシリッと乾いた音が響く。微かに痛む片手にナツはグレイを見る。反射的にしてしまった行為にグレイはナツを目を見開いていて見ていた。どうやら、した本人も驚いてるようだ。
二人の様子をギルドの仲間たちも何も言えないで見ていた。先に我に返ったグレイはバッとナツから離れる。




「もう……放っといてくれ!!」

「ちょっ、…グレイ!」




グレイはルーシィの声を無視しギルドから飛び出た。
走って走って走りまくった。
ナツの顔が。ナツの言葉が。頭から離れない。
思い出すだけで胸がドキドキと五月蝿い程高鳴り、顔に熱が集まる。そして、もう一つグレイは分からなくなってしまっていた。今までナツとどう接していたのかを…。
グレイは家に着くとベットまで行くのが面倒で、近くのソファに座り込んだのだった。




もぅ…訳わかんねぇよ。
くそっ。




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