短編
□ちょっとした悪戯
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変わらない一日。
騒ぎ立つギルド内…。
ルーシィは口許を緩めながら、ミラジェーンがくれたケーキを食べていた。隣にはケーキを食べすぎて気分を悪くさせたのか、エルザが机にうつ伏せている。
それを見てルーシィは苦笑するのだった。
そんな時、隣にナツが座った。
いつもより少し遅かった為、どうしたのか。と聞こうとしたが開いた口は閉じてしまったのだった。
ナツがしょげた顔をしていたからだ。
何…この表情。
よりによってあのナツがこうなると、気味悪いわ。
何があったのよ?!
しっかりしなさいよ、ナツゥゥウッ!!
【ちょっとした悪戯】
年中、大騒ぎしているナツが顔を抱えて大きなため息をついた。ルーシィは、目を瞬きさせた。珍しいものをみたように。
「ちょっと、ナツ。…アンタどうしたの?」
「……はぁ」
「アンタ、悩み事でもあるの?珍しいわね」
「…触るの禁止なんだよ」
「はぁ?…なにによ」
「アイツだよ…グレイに」
もう一度、ナツは深い溜め息をついた。
まるでお菓子をお預けされた子どものようだ。
そんなナツにルーシィはハハっと笑うのだった。
笑い事じゃねぇっつーの。とナツは眉間に皺を寄せて呟く。グレイがナツに触らさないように忠告するのはナツが何かしでかしたからでしょ。とルーシィは心の中で思ったのだった。
念のため、話ぐらい聞いてあげようとルーシィは口を開いた。
「なにやらかしたのよ?」
「何もしてねぇよ!!…いきなり、触るなっ。て…触ったら当分口きかないって」
「アララ。…怒らせてないの?」
「するわけねぇだろ!?」
「…そう。なんかよく分からないけど、ご愁傷様」
うるせぇ。とナツは腑に落ちない顔をした。
相当悩んでる様子だった。
すると、突然ナツが立ち上がった。どうしたの?とルーシィはナツに問うた。
「胸糞悪ぃから、クエスト行ってくる!!行くぞハッピー!」
「あいっ」
「ちょっ!…ナツ!」
ナツはクエストボードに行き、適当な紙を千切ってから、ミラジェーンに了解を得ると、とっととギルドから出ていってしまった。相棒のハッピーをつれて。
ルーシィは立ち上がってナツを止めたのだが、ナツは聞く耳を持たなかった。行っちゃった。とルーシィが椅子に座る。と、ナツの奴、行っちまったなぁ。と隣から声がした。
隣を見ると、さっきまでナツが座っていた椅子に、いつの間にかグレイが座っていた。
「アンタ!…いつの間、」
「ミラちゃん!ココア一つ!」
「はーい」
グレイはルーシィの言葉を遮り、ミラジェーンに飲み物を注文したのだった。そして、ルーシィに顔を向け、そうだ。と呟いたのだった。何かと思えばグレイは肩にかけていた鞄からゴソゴソ探り始めた。
それに首を傾げるルーシィであった。お!あったあった。とグレイは何かを見つけルーシィに差し出した。グレイの手元を見れば一冊の本が握られていた。
「コレ、ルーシィが探してた奴だろ」
「あー!それよ、それっ!!続きが気になってしょうがなかったの!!」
「やるよ」
「本当?!…ありがとう!」
グレイから一冊の本を貰い、ルーシィは喜んだ。
大好きな本を大切に抱き締めるルーシィにグレイは目を細めて微笑んだ。本を自分の鞄に入れている間に、ミラジェーンがグレイにココアを差し出し、グレイは受け取った。
ルーシィはハッと思い付いたかのように、暖かいココアに息を吹き掛けるグレイに口を開けたのだった。
「ねぇ、グレイ?」
「んー?」
「ナツに愛想ついたの?」
「ぶっ!」
グレイは口に含んでいたココアを吹き出した。
コホコホと咳き込み、落ち着いてからルーシィを見た。その顔からは、はぁ?という文字が書かれていた。
「なんだよ…いきなり」
「だって、ナツが触り禁止なんだよって落ち込んでたけど」
「あぁ〜…」
グレイは思い付いたかのように、ポンッと手と手を合わせた。
「なにか理由があるんだ?」
そう尋ねるとグレイは少し考えるように視線を下ろした。
やっぱりナツが何かしたんだ。とルーシィは思ったがそれは大きく右に逸れた。グレイは、くく。っと肩を振るわせて笑ったのだった。それに、ルーシィは首を傾げた。
いやー…だってよ。とグレイはおかしそうに呟き、ココアが入ったコップを持ち上げて、再び息を吹き掛け始める。
「触られすぎて、飽きられたら嫌だろ?」
そう言って、グレイは一人楽しそうに笑った。
(でも、俺が持ちそうにねぇわ)
(え?)
(やっぱ、ナツには触れて貰いたいからな…)
(まったく、ナツをからかうのは程々にね)
(おーぅ)
*fin*
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皆様、お久し振りです。
冬夜でございますっ!
学校始まると中々更新できないものでしてっ(汗)
今回はグレイに「触られ過ぎて、飽きられたら嫌だろ?」と言わせたい一心でできた駄作でございます。(笑)
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです!
11.5 冬夜