記念リクエスト
□Return The Time
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『一時の…気の迷いで言っちゃいけねぇ事だってあるんだぜ』
俺は…少し、少しだけ…
お前との関係をいっそ切ってしまおうと考えた事がある。
だって…俺は―…
†Return The Time†
「怯むな!!攻めるんだ!!」
近藤が部下に指示を出すにつれ雄叫びが上がる。真夜中の午後2時江戸に鬼兵隊が現れた。幕府を襲おうとした鬼兵隊に真選組がぶつかり会う。
「突き進め!!邪魔する奴は、徹底的に斬り倒すでござる!!」
「武市先輩何処突っ立ってるんすか!!」
「闘い嫌いですから…」
「何言ってるんすか!!変態ヘタレ武市!!!」
君の先輩だからッと武市が突っ込む。辺りは、斬り合い。殺られた者は冷たい地面に転がっていた。いずれは、どちらかを滅ぼさないとならない関係。
「…ッらぁ!!」
土方は、鬼兵隊の部下を斬り倒した。もう、何人斬ったのかさえ数えきれないぐらい斬ったのは土方自身分かっていた。
どうなってんだ…。河上万斉に来島また子が中心に動いている…。奴等の中心人物は高杉のはずだ。その高杉は何処にいったんだ?!
土方は、いくら見回しても高杉の姿を見つけだす事は出来なかった。確かに、高杉が居なくとも万斉達は結構強い。
「……ッ??!」
建物と建物の間から人影が見え土方は一瞬行動を止めてしまった。そのせいで、敵に斬られそうになり土方はつい目を固く瞑ってしまったが痛みがこなかった為目を開けると栗色の髪を持つ少年の後ろ姿。
「何してんでぃ!!土方コノヤロー!!」
「…そ、う悟」
「俺以外の奴に殺られるなんて許さないでさぁ!」
「お前なぁ…」
「それでも…間に合って良かった」
「総悟…」
何か言う事ないんですかぃ?とニタリと沖田が笑うと、土方はありがとよ、と礼を言った。
「総悟、俺ァちょっと抜けるぜ。向こうに逃げ込んだ奴がいるからよ」
「分かりやした」
ダッと走り出し先程人影を見つけた建物の間を通った。雲が月を覆って辺りは暗い。月の明かりという少しの明るさがあれば助かるのになと思っていると砂利の音がし、振り向けば誰かが立っていた。
「誰だ…鬼兵隊の奴等か??」
「おや?もうバレちまったかぁ」
木柱からヌッと現れた奴に刀を向けると聞き慣れた笑い声がした。月の半分が雲からでて暗い夜に小さな明かりが灯される。
「高、杉?!」
「よぉ、5日ぶりだな副長さんよ」
そこに立っていたのは、土方が探していた中心人物、高杉晋助だった。そして、土方は5日前高杉に会っていた。丁度この時間だっただろうか気分的にパトロールをしていると高杉を見つけ後ろから刀を突き刺したのだった。高杉は、ククッと笑い振り向き「やっぱりてめぇか」と呟いた。
『テロリストがこんな時間に散歩か??』
『あぁ、指名手配人でも散歩してぇ時があるからなぁ』
『目的はなんだ…』
『……てめぇに会える感じがしたから歩いてただけだ。安心しな、暴れに来た訳じゃねぇ。刀下ろせよ』
『……』
『ホラ、俺ァ刀なんざ持ってねぇぞ』
そう言い両手をあげた。土方は溜め息をつき高杉から刀を下ろした。
『俺に会う理由は…??』
『質問が多い奴だなァ、気分的にだ』
『そうか…』
…あぁ、心臓がバクバクして引き裂かれそうだ。緊張する。それも、そうだろうな。俺は恥ずかしながら―…
『……土、方』
『……』
お前の事が好きなんだ―…。
土方は、後ろから高杉を抱き締めた。そこで初めて感じた。高杉の体温。そして、高杉から漂う香り。思っていた以上に体が小さく女のように細い。
『高杉…』
『クク、どこかで頭ブチ当てたかァ?』
『…高杉、俺ァてめぇが好きだ。好きなんだ』
『……』
今、好きな人を抱き締めている事が嬉しくて土方は力を強めた。その際、高杉は小さく体を揺らした。
俺は…指名手配人の高杉晋助を包み込んでいる。捕まえるチャンスなのに、体が言う事を聞かない。それより、何より高杉が欲しかった。
『一時の…気の迷いで言っちゃいけねぇ事だってあるんだぜ』
『高杉!!俺は本気で…』
『土方!忘れるな…俺達ゃ敵同士なんだ』
『……ッ』
高杉の言っている事は正しい。土方と高杉は敵同士。土方は、悪者から街を守る真選組の副長。高杉は、鬼兵隊の総督だ。土方の力が緩むと高杉はスルリと抜けた。
『…邪魔したな、またな』
『……』
高杉が歩く後ろ姿を黙って土方は見つめていた。呼び止める事が出来なかった。…いや、呼び止める理由などなかった。
そうだ…敵同士なんだ。
俺とあいつは…いずれかは刀を向けなければならないんだ。
「殺りにきたのかよ?」
「いや…残念ながら違ぇな。5日前の続きしようと思ってな」
「…え?」
高杉は、小さく口元をつり上げ土方を見た。自分より少し高い奴を。
「嬉しかった…」
「……は?」
「おめぇが言ってくれた言葉だ…」
土方は、うっとくぐもり顔を赤くさせた。
ククと喉を鳴し、土方に近いて行く目の前まで来ると高杉は背伸びをし土方の唇に己のモノを当てた。軽い、本当に軽いキスだ。が、土方が高杉の頭を片手で掴み押し寄せキスを深くさせた。
「…んッ…ぁ、ん…はッ」
「高杉…」
肩で息をする高杉を抱き高杉の髪に頬を寄せた。
「高杉…どうしてだ??」
「…好きだからに決まってんだろ。俺も、おめぇが好きだった。ずっと前から」
「……」
「だけどな…」
分かってる…。
そんな事分かってるからな。
「俺とお前は…」
そう…俺とお前は、
「「敵同士だ…」」
「俺は…あいつ等を裏切る訳にはいかない。お前も、仲間が居るだろ、大切な仲間が…」
「……」
「もし、付き合って俺と居る事がバレればおめぇは俺の仲間と見なされ何されるか分からねぇ」
「……」
「だから、こうやって会うのは多分これが最後だ」
「……ッ」
土方の背中に回っていた細い腕がゆっくり放れていく。距離を徐々に取り高杉は、少し潤んだ目をして微笑んだ。
「土方…好きだ。だけど、次会えば敵だ。油断してるとブッた斬るからな」
「…高杉」
「…ッ土方さん!!」
「総―…ッ!!?」
ギィィンと刀がぶつかり夜の道に響いた。土方の帰りが遅いのに違和感を感じた沖田が来た途端、高杉が刀を出し土方を襲った。土方は、すぐさま己の刀で受け止めたが少し遅かったら殺られていたかもしれない。
「クク…"副長"であろう者がぼーっとしてんじゃねぇよ」
「……ッ」
土方は、力任せで高杉を押し飛ばした。高杉は、口元をつり上げ、後ろを振り向き呟いた。
「万斉!居るんだろ」
「お呼びでござるか?晋助」
「退くぞ…」
「承知」
そういうと土方に向かって走り出した。万斉が土方を通り過ぎて高杉も同じく通り過ぎた。通り過ぎる際に、耳元で小さな声で言った。
悪かったな…。本当に、好きだった。
沖田が、追いかけ遠くの方で誰かが叫ぶ声がする。逃がすな、と。その後、さっきまであった争いが嘘のように静まり返り辺りも少しずつ明るくなり初めていた。土方は、下唇を噛み締めた。
総悟が来たから、攻撃してきたんだな…。
さっきまで俺と話していた事をバレねぇように。どうして…止められなかった。運命がなんだってんだよ…。
「…くそッ」
もしも…
時間を戻せるならば、
あの日に戻ってもう一度…
もう一度お前に会いたい…。
そしたら、こんな後悔なんてしなかったのに
(運命に逆らえない俺の馬鹿野郎…)
*fin*
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名無し様、お待たせしましたww
ちょっと切ない話でと言うリクエストでしたが満足な話になっていたでしょうか??(汗)
そうでありましたら嬉しいですww
リクエストありがとうございました!!
11.14 冬夜