記念リクエスト

□約束
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「負けを認める、だと??」






降参しよう、と桂の提案に高杉は息を呑んだ。今は、攘夷戦争という侍と天人の戦争を行なっている最中である。殺らなければ殺される。斬らなければ斬られてしまう。その恐怖の位置に立たされ武士たちは死に物狂いで戦っていた。だが、所詮は人間。少し刃が肉に突き抜けただけで死ぬ脆い生き物。肉に突き抜けても死なない化け物とは桁違いだ。




「ふ、ふざけてんじゃねぇよ、ヅラァ!!!!」

「ふざけてなどおらん!!此所まで追い詰められているんだぞ!!?奴等を倒す策などもうない!!」

「じゃあ、諦めろっつーのか?!てめぇは、そお言いてぇのかよ!!なら、今まで俺たちは何で戦って来たんだよ!!?死んでいった仲間はどうなんだよ!!!」




はぁはぁ、と息を乱しながら高杉は怒鳴った。ズキッと傷が痛み呻き座り込む。今は、森に逃げ込んでいる。その近くにはもう天人が迫って来ているのだ。高杉も、怪我をして案外重傷である。左腕をザックリ殺られ動かせない状態だ。




「命が惜しくなったか…ヅラァ」

「そうでは…」

「ないとは言わせねぇぞ」

「……ッ」




高杉がギロッと睨むと桂はどうすれば分からなくなり顔を歪ませた。すると、側にいた坂本が口を開いた。




「高杉…水をさす様で悪いが」

「……」

「確かに、高杉は仲間をよう見ておる。じゃが、今おんしは仲間をよう見ちょるか??」

「―…な、に」




坂本の口からでた言葉に高杉は周りに目を向ける。そこには、重体者が何人もいておまけに戦う前より人数が少ない。本当にこれだけなのか?と言いたいぐらいに少ないのだ。




「天人は、最初の戦と違い破壊力の強い兵器を沢山持ってきちょう。流石にもう…」




茫然とする高杉に銀時が近寄り真剣で自分の着物を切り取った。そして、それを高杉の怪我をした左腕に巻き付けた。




「晋助…諦めよう。死んでいった仲間たちの為に生きて行こう」

「……ッ白夜叉であろう男まで言うのかよッ」

「俺だって悔しい。だけどな…晋助。いくら頑張っても無理な事だってあんだよ」

「―……くそッ」

「晋助!!!」




刀を持ち走っていく高杉に銀時は追いかけた。辺りは、真っ赤に燃えている。天人の攻撃で火の海だ。刀だけの侍と違い天人は色々な武器を持っている。コレは大砲かなんかだろう。




負けを認めろ??冗談じゃねぇよ!!
負けねぇ…負けてたまるかよ!!





「よせ、晋助!!」

「放せ…銀時!!!俺は、諦めねぇよ!!ッ俺は!!」

「現実を見ろ!!!」

「―…ッッ!!」




また砲玉が近くの森に打たれ火に包み込まれた。天人は、このまま打ち続け森全体を火の海にする気である。高杉は、現実を見ろと銀時に言われ正面を見ると絶句した。数えきれない程の天人がズラリと並んでいたのだ。きれる事なく続いている列。すると、途端に攻撃が止んだ。後ろを向くと桂や坂本、動ける者が枝に白い羽織りを掛け振っていた。それは、降参の意味を現わす。




「…負けたんだ、俺たちは。ごめんな、晋助ッ、ごめん」




銀時は、ギュッと後ろから強く抱き締める。高杉は、奥歯を噛み締めながら涙を流した。




「う、ぁあぁぁぁぁあぁぁぁッッ!!!」


















†約束†


















「あー、頭痛ぇ」




銀時は、頭を抑え起き上がった。今日も爽やかな朝だ。薬ー薬ーと呻きながら錠剤を見つけると口に放り込み水で飲み込んだ。




あ゙ー、目覚め最っ悪。
昔の夢はいつ見ても目覚め最悪だな。




銀時は、はぁと溜め息をついた。すると、スーっと襖が開く音がし振り向けば高杉が立っていた。銀時がおはよ、と挨拶をすると高杉は無表情で頷いた。攘夷戦争後、高杉は仲間の死を無駄にしてしまった事にショックを受け喋れなくなり、おまけに笑えなくなってしまった。そんな高杉を連れて、二人で万事屋を開いたのだった。




「朝食はいつも通り??」

「……」

「了解ww」




コクリと頷く高杉に笑い銀時はテキパキ動いた。喋れなくなっても、仕草で分かる。笑えなくなっても、怒った表情、悲しい表情、困った表情はちゃんと伝わっている。銀時は料理を作りながら、頭は違う事を考えていた。




晋助の声……早く聞きてぇなぁ。
笑った顔も見たい…。
アイツから声も笑った顔を奪ったのは俺だ。
間違いなく俺なんだ…。俺がもっと強かったら、少しは違ったかもしれない。




くそっ、と心の中で吐き捨てる。今更悔やんだところで何も変わらない。そんな事、銀時だって良く分かっている。



「―……」

「……」




フワリと後ろに暖かさを感じた。振り向けば、高杉が銀時の腰に手を回していた。高杉と目が合い銀時は苦笑した。




「分かってる…分かってるよ。俺のせいじゃないって言ってくれてんだろ??」

「……」

「ありがと、晋助―…」




またコクリと頷く高杉に銀時は、高杉と向かい合い小さな彼を抱き締めた。緩む事がなく、強く、強く、抱き締めたのだった。もう二度と離れないように。





聞きたい…。晋助の声が聞きたい…。
あの声で俺の名前を呼んでくれる日は…、
来るのだろうか―…。





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