記念リクエスト

□この手のひらに掴んだモノ
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いつも、売春することが俺の日課…。
ない日なんてありゃしない。
金を貰って身体を捧げる、その繰り返し。




「…ッん、くぁ」

「声出してくれよ、晋助くん」



不感症になってしまった俺は欠陥人間だ…。
そこらへんの男と愛もないのに肌を重ねる。
なんで売春なんて始めたのか俺自身さえ分からない。知らないオッさんに無理矢理犯されたからだろうか??どちらにせよ、俺にはもう、どうでも良かった。




「ひ、あッ…ぁ」

「今夜も最高だねッ」




ただ、俺を見て欲しかった。
ただ、俺を愛して欲しかった。
ただ…それだけのことだったのに。
俺は―…どこから踏み外したのだろうか??
その答えさえ、分からなかった。冷静に考えれば分かるのかもしれない…だけど、その答えを知るのが怖いから探さない。




「はい、3万円」

「あり、がと…」




あぁ……誰か。




「また、よろしくね。晋助くん」

「…は、い」








俺に「愛」という意味を教えて下さい―…










†この手のひらに掴んだモノ†










「…母、さん。誰だよその人」

「私の再婚相手よ。早速なんだけど晋助」

「……」

「荷物まとめてくれるかしら??私、この人と二人きりでやり直したいの。悪いけど貴方にはいなくなって貰うわ」

「……」





晋助は、ヨタヨタと部屋に行き適当に荷物をまとめた。涙など出なかった。晋助は、心も涙も枯れてしまったのかと自潮した。父親にも母親にも愛されなかった晋助。父親は、母親と晋助を捨て他の女と同棲。母親は女ひとてで晋助を育ててきたが次第に朝帰りになっていた。




分かっていた…。
いずれこうなる事を…。
他の男を作ってると微かに感じていた。





荷物をまとめ部屋からでると、母親とその再婚相手の車に乗り、晋助に行く先も告げないまま車を走らせた。着いた場所は「万事屋銀ちゃん」その看板を、ジッと見つめる晋助に対し母親はカンカンと階段を登っていく。その後を追おうと歩きだそうとすると運転席に座っている男に話かけられた。




「可哀相にねぇ…二人の両親に拒絶されて」

「……」

「ま、君がどうなろうと俺たちには関係ないけどさ。俺たちは幸せに暮らさせてもらう」

「……」

「おっと、恨むのなら自分が生まれてきたことを恨んでくれよ」

「……さようなら」




晋助は、ふいっと背中を向け「万事屋銀ちゃん」というふざけた看板をもつ家へと向かったのだった。母親と同じくカンカンと階段をゆっくり上がっていく。上がり終えると銀髪の男と母親が話していた。その側には、眼鏡をかけた少年とオレンジ髪の少女が立っていた。




いくら、何でも屋でも俺を拾う訳ない…。




バカバカしくなり始めた時、銀髪の男と目が合った。死んだ目をしている銀髪の男の目がだんだん輝いていくのは何故だろうか、と晋助は頭の中で疑問符を浮かべていた。交渉を得たのか母親は一礼し車へ戻ろうと晋助の横を通り過ぎていった。晋助は、別に傷ついたりしなかった。ただ、走り去って行く車を見つめていた。




「晋助くん、なんだよね??」

「…はい」

「どうぞ、上がって」

「……ありがとう」




家に上がると汚くも綺麗でもない居間へ通された。晋助は、ソファに座るよう言われ素直に従った。眼鏡かけた少年は台所へ行き、銀髪の男はちょっと便所、と呟きトイレへ。
そして、オレンジ髪の少女はというと…晋助を近い距離からガン見していた。





どうしたのだろうか…。そんなにガン見されたら、非常に目合わせにくいんだけど。




「な、なにか??」

「綺麗な顔アル!!別嬪さんネ!!」

「……はぁ?」

「くぉら、神楽。そんなに迫ったら晋助くんが困るでしょうが!!」

「だって銀ちゃん、コイツ男のくせに別嬪さんヨ!!グッドヴォイス、アルww」

「神楽ちゃん、多分フェイスの間違いだと思うよ??」




どうぞ、と眼鏡をかけた少年にお茶を差し出され晋助は礼をした。話の内容で晋助は、オレンジ髪の少女の名は「神楽」なのだと分かり、銀髪の男は「銀ちゃん」と言われていた為、「銀」がつくのだと理解していた。それにしても、さっきからぎゃあぎゃあ騒がしい。




「いつも、こうなのか??」

「はい、そうなんです」

「ダメガネ!!てめ、何一人だけ晋助くんと話してんだよ?!血祭りにされてぇのか新一コノヤロー!!」

「眼鏡へし折るぞ新太郎!!」

「意味わかんねぇよ!!大体、新八だっつってんだろ!!!苛めか?!これは苛めと判断して良いんですか?!」

「わあったよ。悪かったな新八郎くんww」

「てめ、わざと言ってんだろ!!なんなんですか、その笑みは?!」




騒がしかったのが、さらに騒がしくなり晋助は耐えきれず、クスリと笑いを零してしまった。三人が晋助を見るとツボにハマったのかお腹を抑えて笑っていた。三人も顔を見合わせ笑った。




「よし、まだ自己紹介してなかったな。俺は此所のオーナーの坂田銀時な」

「私は、歌舞伎町の女王である神楽ネ」

「僕は、志村新八です」

「俺は、晋助。よろしくお願いします」




こうして晋助は、万事屋ファミリーの仲間入りとなったのだった。




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