記念リクエスト

□初雪からの贈り物
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昔、昔、あるところに美しい女の子と気高い王子様がいました。ある日、女の子は王子様に恋をしました。
ですが、相手は国の王子様で女の子は庶民の者の中で一番、貧乏。それに、誰もが王子様に恋していました。彼女は、時が経つにつれて王子様を諦めかけ雪が降る中、一本道を歩いていた時に、王子様が現われたのです。




(おぉ、なんと美人な方なんだ。貴女が宜しければお付き合いを申上げたい)

(まぁ、私をですか??)

(はい…。実は、前々から貴女を知っておりまして一目惚れしてしまったのです)

(私で宜しければ…)




初雪の日に出会った二人は、結婚する事になり、幸せに暮らしましたとさ。







「…ケッ、くだらねぇ。御伽話にも程があるぜ」






そう言うと高杉は、絵本を片端へ放り投げたのだった。











†初雪からの贈り物†











只今、万事屋のオーナーである高杉は、下の階のスナックヅラ子の店で寛いでいる。高杉は、部屋の隅にある本棚から絵本を見つけ、目を通すと、流石御伽話だな、と思った。小さな絵本に纏められている話は、簡単に纏めすぎだ。絵本でなければおかしな事だ。




これが実話だったら、王子…単なるナンパ野郎じゃねぇか。んで、女の方は相当軽い奴だ。




くだらねぇ、と呟き放り投げれば壁に当たり何処かのページが開いた。すると、桂の怒鳴り声がした。一応言っておくが桂は…え??知ってるって!?いやぁ、一応聞いてやって下さいよ…。えー、桂は男である。看板にはヅラ子とあるが男だ。何故女装にしているのか高杉さえ不明であった。




「晋助、貴様!!人の大事な絵本を!!」

「ヅラァ、てめぇ年幾つだと思ってんだぁ。その年で、絵本たぁひくぜ」

「戯け!!貴様は御伽話の素晴らしさが分からんだけだ!!良い話ではないか!!」

「……そう思うのおめぇだけだと思うぜ」




ボソリと呟き高杉は、立ち上がった。今から、依頼なのだ。桂は、ドアの開く音を耳にしなんだ、もう行くのか、と言った。外にでると、冷たい風が槍のようにチクチクと突き刺さる。冬という季節に入って初雪が降った。天から舞うように散る白い粉は、路上に積もり始めていた。




「車と変な人には気をつけてなさいよ!!母さんは、心配なんだ!!」

「てめぇが、母親なら俺ァ死を選ぶ…」

「相変わらず口が悪いのだな」

「クク…何を今更。…ヅラァ、口寂しい」

「全く貴様という奴は…」




桂は、溜め息をつくと高杉に口付けをした。高杉は、満足げに笑い、じゃあな。と手で解釈し道を歩いて行った。桂は、高杉の後ろ姿が見えなくなるまで見送ったのだった。




「良く来てくれたヨ」

「依頼だから仕方ねぇ…受けてやるよ」

「金ちゃんの知り合いって聞いたから、使えると思ったアル」

「口が悪ぃ、オーナーだなァ」

「お前もな」




そう言うと、此所"姫月"(かづき)のオーナー…神楽にホスト店へ導かれた。高杉は、中に入るのは初めてで辺りを見回した。すると、聞慣れた声がし、正面を見た。




「よ、晋ちゃん。待ってたぜー」

「ケッ…変な誘いに巻き込みやがって」

「何でも屋でしょー」

「黙れ、俺ァ過激な依頼しかしねぇんだよ」

「でも、来てくれたじゃん」

「……ちッ」




高杉は、ぷいッとそっぽを向いた。金時と高杉が出会ったきっかけは、高杉が依頼で複数の悪人と戦っている時に金髪の男性に助けられた事から。それから、少しの時間がある日には、ちょくちょく会っていた。高杉は、話す度金時のいろんな事が分かった。金時は、見た目と違いキス恐怖症なのだ。




「金ちゃん、コイツに似合いそうなスーツ奥の部屋で選んで来てヨ」

「へいへい、行くぞ高杉」

「…あぁ」




高杉は、一足先に歩く金時の後ろ姿を見つめた。実を言うと、高杉は金時が好きなのだ。しかし、それは片思いに過ぎない。それに、金時には隠しているが、高杉はキス魔である。キスが好きで仕方がなく、見知った人とはしてきている。万事屋メンバーの万斉や、先程の桂…その他諸々だ。




「うーん、コレとコレとコレねッ!!!」




バッバッバッと金時は高杉に服を渡し、高杉はサッサッと更衣室へ連れていかれる。渡された服に渋々着替え更衣室から出た。すると、金時は高杉を見ると目を丸くさせ、流石、俺!!と呟いた。




「似合ってんじゃんww金さんと色違いのお揃だよ。嬉しいだろー」

「…はいはい、嬉しいですよ」

「棒読み?!可愛くねぇのッ」




プンプンと怒る金時を無視して高杉は、俯いていた。ホントは嬉しくて仕方がないのだ。好きな人とお揃いだなんて嬉しいに決まっている。




「金時ィ…」

「なぁんだよ」

「キス、していい??」

「…はぃぃ?!」




高杉は、金時の首に腕を回し唇を寄せる。金時は顔を引きつらせている。あと少し高杉が動けば金時の唇に当たる範囲だ。真っ青にいる金時に高杉は、プッと声を漏らしハハハと笑った。スルリと腕を首からおろし金時から離れた。




「冗談に決まってんだろ。クク…今のおめぇの顔、客人に見せてやりてぇぜぇ?」

「ししし晋助くん!!お前のせいで寿命縮んだじゃねぇかぁ!!!」

「キス恐怖症のお前の為に、克服させてやろうと思っただけだ…有り難く思えよな」

「有り難迷惑だコノヤロー」



金時は、そう愚痴ると高杉同様笑った。すると、神楽に呼ばれ二人は部屋から出たのだった。高杉は、目を細め隣りに歩く金時を見つめた。金時は、視線に気付いたのか横を向き高杉に目を合わせた。




「…どうしたの?金さんのクールな顔に見惚れちゃった?」

「寝言は寝て言え、馬ー鹿」

「えー、晋ちゃん酷〜い」




とか何とか言いながら金時は目を細め笑っていた。





好きだ…。
おめぇのそうゆう笑顔…何もかも、おめぇに惚れてる。悔しいぐれぇ、ベタ惚れだよ…。





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