記念リクエスト

□高杉くんの小さな嫉妬
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「……ちっ」




高杉は、苛立ちを示すかのように道をドスドスと歩いていた。オマケに、煙管をスパスパ吹かしている。殺気に包まれている高杉の横を通り過ぎる人々は、顔を引きつらせ、殺気立てる高杉から距離を取る。
高杉が怒っている原因は、皆さんも薄々感づいているだろう。そうあの人だ。




「もう、嫌いだ。次会ったら…ぶった斬ってやらぁ」




銀時の馬鹿野郎。
天パ、綿菓子頭、糖尿予備軍、死んじまえ。
てめぇなんか、所詮敵に過ぎない…。
次会ったら恋人も糞も関係なくぶった斬ってやる!!!ミンチにしてやるっ!!
そして、定春に喰わしてやらぁ。




そう、高杉は万事屋オーナーでチャランポラン男・銀時と喧嘩したのだ。なんで喧嘩になったかと言うと―…、






「アイツなんか、あの女と付き合って、結婚しちまえば良いんだ!!花束ぐらい贈ってやるよ!!………毒入りで」







― 高杉の嫉妬だ…。 ―












†高杉くんの小さな嫉妬†












高杉が怒る前の、二人の時間を振り返ってみる。高杉は銀時に会う為、万事屋へと訪れた。
しかし、無事についたというのに銀時はジャンプに夢中。高杉が何か言っても、「んー」や「うん」と話を聞いていないような返事をし、酷い時は「あー、うん、うん」だ。高杉は、苛立ちが募る度、悲しみも一緒に募っていった。
銀時がジャンプ読み終わるまで煙管を吹かしたり、刀の掃除をしていたが、それでも、銀時は読み終わる様子がなく、高杉は寝床から枕を持って来て抱き締めていのだった。




なんだよ…銀時の奴。
自分から呼んだくせに…ジャンプなんか読みやがって。自分勝手な奴…。何で、俺が…。
何で俺が…我慢しなきゃならねぇんだよ!!?
…意味分かんねぇ。




高杉は、力任せにチャンネルを掴みテレビをつけた。テレビ画面は、丁度ニュースをやっていた。どうやら、事件が起きたようだ。場所は、万事屋から近い商店街だ。そこで強盗があり、天人が暴れて逃走したようだ。




『では、現場の状況をしてもらいましょう。現場の結野アナ、結野アナー』

「……」

『はい、こちら現場の結野です。現場は酷い事になっています。天人三人が暴れて、怪我人が数名出た模様で、天人三人は大金を持ち逃走しているようです』

「……(確かに酷ぇ事になってんな)」

「結野アナじゃんんんん!!!」




今までジャンプを読んでいた銀時が、結野アナの声に反応。勿論、高杉はびっくりだ。テレビの近くに行き結野アナを見る銀時に、高杉は心の奥がチリチリとしていた。もう帰ろう、と判断した高杉は玄関から出ようとした、が強い力に引っ張られてしまったのだった。




「銀時ィィ!!!てめぇ何しやがる!!」

「晋ちゃんだけ行かすかぁぁぁ!!!」

「はぁ!?何の事だよ糞天パァ!!…死ねよ!!」




意味が分からず高杉は、銀時に引っ張られたまま躓きそうになりながらも足を動かした。
連れて来られた場所は、先程の現場に近い所だ。銀時が何企んでいるのか、心が読めない。




いつもだ…。
コイツが考えている事は全く読み取れない。




「なあ、銀時。何考えて―…」

「お、いたぁ!!結野アナぁぁぁぁ!!」

「………」




高杉は、辺りをキョロキョロしている銀時に話かけようと服を掴もうとしたが、その手は宙をきった。高杉は、目を見開き、銀時の後ろ姿を見た。銀時が駆け付ける向こうには、女性が立っていた。そう、結野アナだ。
生中継だった為、銀時は現場の所まで行けば結野アナに会える、そう考えたのだ。行こうと思ついた時、高杉が万事屋から出て行くのを見た銀時はてっきり高杉も結野アナ会いに行く気ではないのかと考えてしまったのだった。




……なんだよ、結野アナ、結野アナって。
俺はなぁ…てめぇがジャンプ読み終わるまで待ってたっつーのによぉ!?
ずっと我慢…していたのに……限界だっ!!




「結野アナ、サイン下さい!!」

「あ、貴方は万事屋の人ですね」

「そうそう、坂田銀時でーっす…ぶらぁぁぁあぁぁ!!!?」




いかにも痛そうな音が響く。銀時は、涙を溜め、頭を抑えている。高杉が鞘ごと刀を腰から抜くと銀時の頭目掛けて振り落としたのだった。




「いだだだだ!!何しやがんだコノヤロー!!脳みそ出てない。ねぇ、結野アナ脳みそ出てないコレ??」

「血なら出てますよ」

「マジでか!!…晋助、てめいきなり何しやがんだ!!!」

「るせぇな!!こちとら、わざわざ会いに来てやってんのにてめぇは、なんなんだよ!!?」

「だぁかぁらぁ!!!何怒ってんだよ、意味分からないっての!!」

「…き……な、か…ッ銀、時なんか…嫌いだ」




高杉は、微妙に涙を零さないようにしている片目で睨み付け、踵を返して走っていったのだった。当たり前の事で、銀時が呼び掛けても高杉は振り向かなかった。








「……」




そして今に至る。さっきより苛立ちは収まったが、今の気持ちは悲しみに満ちていたのだった。




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